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日本図を作り上げた秘密のひとつに「天体観測」にアリ

〝伊能図〞の 測量法を完全解説!

■日食や月食観測の時差から経度を求めたが成功せず

 忠敬が観測した天体は、今で言う小熊座やカシオペア座、獅子座など、誰でも見ることができるものだった。その方が探しやすかったからだと推測される。

 最近の研究で忠敬は北極星の観測をほとんどしていないことがわかった。旅先での観測は、狙った恒星が子午線を横切るのを象限儀に取り付けた望遠鏡で捉えて、角度を読み取るのである。

 また、伊能隊は天体観測から、経度も求めようとしていた。日食や月食を観測し、食の始まりから食甚(しょくじん)、終わりの時刻を記録。江戸浅草の暦局と大坂の間観測所で観測されたものとの時差から経度を割り出そうとした。

 日食や月食はあらかじめ予定がわかるので、1週間も前から現地に入り準備をしたが、当日の天候が悪ければ観測できず、伊能らがいる場所が晴天でも、暦局や大坂が悪ければ失敗である。記録によると、13回実施された日月食の観
測で、3カ所とも観測できたのは2回しかなかった。伊能隊は緯度の測量では大きな成果を挙げたが、経度の測量では、あまり上手くいったとは言えないのだ。

■一般的な機器の使用で、経度の観測も試みた

 経緯度の観測には、他の機器も利用した。その一つが「垂揺球儀(すいようきゅうぎ)」。と呼ばれる振子時計。1太陽日の振動数を調べることで時間を算出した。また、「測食定分儀」という装置を望遠鏡の先端に付け、刻まれた目盛りで、食の進み具合がわかるようにしたものもあった。しかし、経度の測定は、なかなか上手くいかなかった。

〈雑誌『一個人』2018年6月号より構成〉

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