【文科省解体? 認定こども園化?】『こども庁』は誰のために創設されるのか
第74回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-
「こども庁」に対する関心が急速に高まってきているが、その中身は曖昧だ。そもそもなぜ創設するのか。メリットは何なのか。どのようなリスクが存在するのか。その結果、文科省はどうなるのか…。
多くの課題や懸念を抱えたまま性急なプロセスを進む「こども庁創設」について考えたい。
■創立に向けた早急なプロセスへの違和感
こども庁の創設を協議する自民党の「『こども・若者』輝く未来創造本部」が、4月13日に初会合を開いた。次期衆院選の党公約に明記するとともに、政府が6月にもまとめる経済財政運営と改革の基本方針(骨太の改革)にも反映させことを目標にしている。
現在は文部科学省(文科省)と厚生労働省(厚労省)、そして内閣府の3府省が担当している、子どもに関わる政策を一元化するのが「こども庁創設」の狙いである。縦割り行政の打破を掲げる菅義偉首相(自民党総裁)にしてみれば、こども庁を縦割り行政打破の象徴にし、自らの存在をアピールする狙いもあるだろう。
13日の自民党会合で本部長に就任した二階俊博幹事長は、『首相から『国家的課題に党一丸で取り組んでほしい』と強い指示があった』と述べている。菅首相の肝いり案件であること強調してみせたのだ。
しかし、菅首相が『国家的課題』と位置づけるわりには、創設案は唐突に登場してきた印象がぬぐいきれない。
党総裁直属の機関を設けてこども庁創設の議論を進めるように菅首相が指示したのは、4月1日のことだった。そのきっかけとされる若手議員の勉強会の提案書が菅首相に手渡されたのは当日の1日朝のことであり、若手議員からの提案を受けた直後に検討の指示を出したことになる。時間をかければいいというものではないが、「国家的課題」と位置づけるにはあまりにも早急すぎないだろうか。
若手議員勉強会の提案書にしても、じっくり検討を重ねてきたとは考えにくい。勉強会の名称は「子ども行政の在り方勉強会」で、当選4回以下の若手自民党議員30人が呼びかけて発足しているのだが、起ち上がったのは今年2月上旬のことである。それから会合を週1回ほどのペースで開き、3月16日には早くもこども庁創設を求める緊急提言案を発表している。菅首相に手渡された提案は、これがベースになっている。
そして、この勉強会の案も、練られた内容とはいいがたい。緊急提案を発表した翌日にインターネットテレビに出演した勉強会の主要メンバーのひとりである山田太郎参議員が、『まずは、もう起ち上げて離陸させる。仏つくって、(それから)魂を入れていく議論をするのがプロセスとしていいと考えている』と語っている。
中身は後でいいから、ともかくこども庁を発足させろというわけだ。どういう仕事をするかわからない形だけの役所をつくることに、国民の賛同が得られるのかどうか疑問である。
それでも党総裁直属の機関で、正式な議論を自民党はスタートさせた。若手議員の勉強会で固まっていない内容を、ここで固めていけばいい、との見方もあるかもしれない。そういう方向にいけばいいのだが、初日から難しそうな雲行きになっている。
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