女性好き、浪費癖…天才音楽家・モーツァルトの人間臭さ
歴史上の人物を四柱推命で鑑定! 第39回 ~モーツァルト~
〇人脈70%(正財2つ、偏財)
人脈は、気遣いができて誰とでもコミュニケーションが取れる星。お金と結婚・恋愛に関わる星でもある。モーツァルトは70%とかなり高い割合で「人脈」を持っている。
中でも「正財」は、真面目で大切な人と信頼関係を築くことができる
「付き合った人とは結婚したい」という結婚願望が強い星であり、結婚生活もうまくいく。また、「偏財」は、様々な人脈を手に入れることができ、お人よしのため騙されやすい面を持つ。こちらは恋愛の星であり、女性好き。「人脈」の星はお金に縁があるが、「正財」は貯金ができるのに対し、「偏財」は、お金は入ってくるが使ってしまうという、いわゆる回転財。
モーツァルトは、「正財」(結婚の星)、「偏財」(恋愛の星)を合わせて3つも持っているが、恋愛の数もその深さも相当なものだったのだろう。
確かにモーツァルトは妻のコンスタンツェ以外にも大勢の女性と浮名を流している。従姉妹(ベーズレ)のマリーア・アンナ・テークラはいわゆる遊び相手で、冗談めかした手紙のやり取りをしている。アロイジア・ウェーバー(コンスタンツェの姉)は、モーツァルトが最初に熱愛した相手。熱烈にアタックをしたが、最終的に失恋し深く落ち込んでいる。ナンシー・ストレースは、ソプラノ歌手で「フィガロの結婚」の初代スザンナ役を演じた。モーツァルトが彼女のために書いたアリア、「どうしてあなたが忘れられるだろうか」は、コンサートアリアの中で傑作といわれる。等々、名前がわかっているだけでも関係をもった女性は多数…。女性関係が絶えないことについて父・レオポルトが咎めると、「僕が無駄口をたたいた全ての女性と結婚しなければならないならば、200人もの妻を持たねばならないだろう」と述べた。それほど多くの女性にちょっかいを出した証拠だろう。
しかし、妻のコンスタンツェを最も深く愛した。ソクラテスの妻・クサンティッペ、トルストイの妻・ソフィアと並び、「世界三大悪妻」の1人と称されるコンスタンツェ。温泉が大好きだった彼女は、夫を放り出して湯治場通いに精を出した。モーツァルトの死の直前、「レクイエム」の制作最中にも子どもを連れて温泉に行っていたという。その後、夫の墓参りもしなかった。しかし、モーツァルトの死後は、作品を整理し楽譜の出版に精力を注いだ。また、コンスタンツェの助力のもと、再婚相手・デンマークの枢密顧問官ゲオルク・ニッセンは「モーツァルト伝」を刊行している。もしかしたらコンスタンツェは、お金稼ぎがしたかったのかもしれないが、モーツァルトの曲や手紙、様子を後世に残した功績は大きい。モーツァルトはコンスタンツェに送った手紙に「お前のところに帰るのが子どもみたいにうれしい」等と書いて愛情を表している。どんな奥さんだったにせよ、モーツァルトの心の支えだったことに間違いない。「人脈」の星を多く持つ、モーツァルト。恋心が作曲の原動力となっていたようである。
また、「人脈」の星はお金の星でもあるが、モーツァルトは音楽活動で相当の収入を得たようだ。後世の学者の試算によると、音楽会収入は1回1000フローリン(700万円)以上、作曲料も「フィガロの結婚」で450フローリン(320万円)以上等、高額な収入を上げていた。しかし、妻のコンスタンツェの浪費癖も相まって、せっかく入ってきたお金を右から左にどんどん使ってしまったようだ。また、引っ越し魔だったのか、2人が転居した回数は9年で11回に及んだという。
※「偏財」+「絶」=だまされやすい
通変星に「偏財」、十二運星に「絶」の組み合わせは、最も人から騙されやすい。しかも、モーツァルトは命式の中で最も重要とされる月柱にこの組み合わせをもっており、この要素が強く出ていたことが予想される。
パリでモーツァルトの面倒を見てくれた、貴族・グリム男爵がレオポルトに宛てた手紙で「息子さんは誠実に過ぎ、他人に騙されやすいことはこの上なく、成功に結び付きそうな諸事には無頓着すぎる」と述べているように、お金をだまし取られたり作曲料を貰えなかったりということも多々あったという。
○知性30%(偏印、印綬)
知識が豊富で物事を論理的に備えることが得意な星。中でも、「偏印(へんいん)」は、学校で習う以外の勉強が得意で(現代で言うとIT、医療関係)ひらめきや企画力がある。「印綬(いんじゅ)」は、幅広い知識を持ち、学校の勉強が得意。勉強が好きで読書や研究に没頭できる。
モーツァルトはIQが200だったという噂があるが(当時知能検査はないのであくまで予想)、誰もが理解できないほど頭がよかったのだろう。
ところで、モーツァルトは芸術性に関する星を持っていない。曲の理論を勉強した上で、バッハのフーガやヘンデルのオーケストラ音楽等を研究していたというが、ただの天才というよりは勉強によるところが大きかったのだろうか。
〇行動力、自立心、遊び心0%
円グラフに示したように、「人脈」と「知性」以外の星は持っていなかった。決して性格のバランスが取れているとは言えない。今にして思うと、アンバランスなところがモーツァルトの魅力であり、多くの曲を生み出すゆえんとなったかもしれないが、と考えると、若年期に比較的落ち着いていたのは、父・レオポルトの存在のお蔭だろう。レオポルトは、早い段階から英才教育を行い、演奏旅行には常に同行し息子の行動を監視をした。モーツァルトにとっては不自由で辛かったろうが、父が厳しかったことで、若年期はバランスの取れた生活を送れたのだろう。しかし、20歳頃に父から独立すると、やりたい放題。父の反対するコンスタンツェと結婚し、宮廷音楽家という職を捨て、たくさんの借金を作って…。このような自由奔放な生活がモーツァルトの曲風に変化を与えたとも言えるので、それはそれでよかったのだろうが、モーツァルトが「変人」と呼ばれるように、もともと生まれもった性格のバランスは悪かったのだろう。周りでそんな彼を支えてくれる人がいればよかったが、コンスタンツェを含め、その後彼を上手くコントロールできる人がいなかったものと思われる。
続いて、十二運星を見ていく。十二運星は様々な解釈の仕方がある。例えば、年柱は若年期、月柱は働き盛り、日柱は晩年期という見方や、年柱は親から受け継いだもの、月柱は仕事や結婚、日柱はプライベートという見方がある。ここでは一般に重要とされている月柱、日柱、年柱の順番に鑑定していく。
「絶(ぜつ)」
運勢エネルギーが「1」であり、十二運星の中で最も低い。輪廻転生で言うと「あの世」の意味を持ち不安定な星。常に精神的孤独を感じており、人から裏切られる経験も多い。しかし、一方で天才肌でもあり、尋常でない才能を発揮できる可能性もある。芸能人に多く見られ、「絶」を持っている人は普通の生活は向かない。
モーツァルトも常に精神的な孤独と満たされない思いを感じていたのだろうか。
「死(し)」
霊感の星。神通力がありウソを見抜くのが得意。ひらめきがあり、ゼロから何かを作ることができる。
モーツァルトに霊感があったかはわからないが、亡くなる少し前、見知らぬ男から匿名で「レクイエム」を書いてほしいと依頼された。モーツァルトは彼を冥界からの使者と信じ「自分自身の最期を弔う曲だ」と涙を流しながらペンを進めたという。「レクイエム」は完成することなく最期を迎えたが、死期を悟っていたということは、スピリチュアル的な能力を持っていたのかもしれない。
「冠帯(かんたい)」
女王様の星。「帝旺」(王様の星)、「建禄」(王子様の星)とともに「身強(みきょう)の星」と呼ばれ、エネルギーが高く人の上に立つことができる。女王様のように、華やかさを好み、社交の場で活躍する。独立精神旺盛で、中年以降に成功する。
モーツァルトは年柱に「冠帯」を持っているが、上記に記したように、月柱は若年期という意味を持つ。モーツァルトはまさに華やかな若年期を送った。ヨーロッパ各地で演奏を行い、「神童」と呼ばれてもてはやされた。7歳にしてパリで演奏を行った際も、大人よりも上手にピアノやヴァイオリンを奏で、目隠しをしてチェンバロを完璧に引き上げ、上流階級をあげての大騒ぎとなった。しかし、20歳を超えて再びパリを訪れた際は、ほとんど関心を示してもらえなかったという。
働き盛りを示す月柱には、最もエネルギーの低い「絶」、晩年を示す日柱には、「絶」に続いてエネルギーの低い「死」を持っており、モーツァルトにとって人生がうまくいっていたのは若年期だけだったのだろう。(音楽的な才能は別)
以上、モーツァルトを四柱推命鑑定してきたが、ただの天才ではなく、しっかり勉強を重ねた秀才であるという新たなモーツァルト像が見えてきた。女性好き、浪費癖はイメージ通りであったが、アンバランスな性格こそが、モーツァルトの持ち味だろう。
四柱推命は当たる、当たらない等というそんな単純なものではない。定められた宿命(命式)を生かすように生きようというある種の行動指針である。その意味で言うと、まさにモーツァルトは、背負ってきた宿命(命式)通りに生きた人だと思う。一見ハチャメチャで不幸な生き方に見えるかもしれないが、女性好きも浪費癖もそれこそが天の定めで、天と繋がったことで世界的な音楽家と成り得たのだと思う。きっと最高に楽しい人生だっただろう。どうしたらモーツァルトのように自由奔放に宿命通りに生きられるだろうか…「レクイエム」を聞きながらそんなことを思う。
古代中国で生まれた「過去、現在、未来」を予見する運命学のひとつで、陰陽五行説(いんようごぎょうせつ)をもとに、人が生まれながらにして持っている性格、能力、素質を理解し、その人の努力や経験で変わる後天的な運命までも予測することができる。
具体的には、生まれた日(生まれた年・月・日・時間)をもとに命式表(めいしきひょう)を作成し占っていく。なお、ここでは生まれた時間は鑑定に含めていない。
「国史大辞典」に記載されている生年月日を、「和洋暦換算事典」を用いて現行暦に換算し鑑定している。
【参考文献】
・「モーツァルト 天才の秘密」中野雄 文藝春秋 (2006)