3度目の宣言下において試される「オンライン授業」やICT端末の活用
第75回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-
■混在型の学校教育で教員はさらに多忙となる
また、オンライン授業だけでなく「プリント学習」も盛り込まれている。GIGAスクール構想による1人1台端末の普及が4月1日が目標に前倒しされたとはいえ、すぐにオンライン授業がスムーズに機能するわけではない。なにより、まだ端末が普及しきっていない地域もある。
それらを考慮して、プリント学習も盛り込まれたのだろうが、そのプリントを準備するのも教員である。プリントは渡して終わりではない。採点などその後のフォローも必要になってくる。さらに、大阪市は「学校での指導を受ける」と、対面での授業実施も予定しているのだ。
つまり、教員はオンラインとプリント学習、そして対面授業の3つをバランスを考慮しながら組み立て、実施していかなければならない。教員の負担は大きくなるのは間違い。よく練られた対策というより、場当たり的な印象は否めない。そして、そのツケは学校と教員に押し付けられる。
東京都や京都府、兵庫県も、全面オンライン授業にはしない。すべての学校の足並みが揃っていないこともあるが、それ以上に、文科省・政府がオンライン授業に積極的でないことに大きな理由がありそうだ。
非常事態宣言が発出された23日の閣議後記者会見で萩生田光一文科相は、「地域一斉の臨時休業を要請することは考えていない」と明言したうえで、「感染症対策を徹底して学習の継続をはかっていただきたい」と発言している。対面授業の継続を求めているわけだ。
もちろん、「感染対策を徹底して」と念押ししている。3密(密集、密接、密閉)を避け、検温など子どもたちの健康管理に気を配り、教室の消毒など、いままで以上の対策を求めている。
大阪市ほどの複雑な登校形態にまではならないかもしれないが、分散登校など、それに近い対応がとられていくことになる。そこで増える仕事を引き受けなければならないのは、まちがいなく教員である。そうした状況であっても、学習面で他の自治体より遅れることも許されない。学力低下は、各教育委員会がもっとも嫌がることだからだ。
3回目の緊急事態宣言では、アルコール提供の自粛が求められるなど、これまで以上の厳しい措置がとられる。しかし今回、学校には「できるだけ通常に近い形」が求められることになる。
これまでと違い、子どもへの感染リスクも高まる変異ウイルス株が広まりつつある。それでも学校の「通常」を続けるには、かなりの対応策が必要なはずだ。学校や教員だけで対処できるとは思えない。
政府や文科省が具体的で効果が期待される対策を示すことなく、保護者が仕事を休まなくても済むような「学校の日常」が求められることになる。学校外での混乱は多少は抑えられるかもしれないが、学校と教員の負担は大きくなり、混乱は大きくなる可能性が高いだろう。
3回目の非常事態宣言にも関わらず、学校と教員に問題を丸投げする状況は1回めの宣言時から変わっていない。
- 1
- 2