日本のネット界に蔓延る「ユートピア志向権力者共同謀議説」に御用心【藤森かよこ】
ユートピアの実現など夢見ている暇はない
女性のみならず男性読者からも今熱い支持をうけている著述家・藤森かよこ氏。初著書の『馬鹿ブス貧乏で生きるしかないあなたに愛をこめて書いたので読んでください』(KKベストセラーズ、2019)がいきなりベストセラーとなり、二作目の『馬鹿ブス貧乏な私たちを待つろくでもない近未来を迎え撃つために書いたので読んでください』(KKベストセラーズ、2020)もAmazon(フェミニズム部門)売れ筋ランキングで第1位に。そして三作目の最新エッセイ集『優しいあなたが不幸になりやすいのは世界が悪いからではなく自業自得なのだよ』(大和出版)を上梓し、「この儘(まま)ならない厳しい現実をいかに生き抜くべきか」を説く。そんな藤森氏がいま日本のネット界で密かに蔓延り、夢見られている「権力者共同謀議説(陰謀論)」に対して警鐘を鳴らす。果たしてそんな陰謀論の中身とは?
■権力者共同謀議論にもユートピア志向のものがある
日本でも新型コロナウイルスのパンデミック騒動が起きつつあった2020年春ごろからネット検索しまくっていた私が見つけたものに、「ユートピア志向権力者共同謀議論」と呼ぶべきものがあった。
権力者共同謀議論(conspiracy theory)は一般には「陰謀論」と呼ばれる。言うまでもなく、この世界の出来事や現象は自然発生的なものでもなく、政治的経済的社会的に大きな影響力を持つ人々の利益を守り確保するための共同謀議により捏造され仕組まれるものであり、庶民が選挙で選んだ代表者による正当な手続きを経た議会で決定されるものではない、という考え方である。
こういう発想は理解できる。中学生くらいでも、「太平洋戦争中の日本は、わざと負けるような作戦ばかり選んで変だなあ? 参謀本部って大秀才の集まりだったはずなのに変だね?」とか、「戦争があれば武器商人は儲かるんだから、自分の国にテロ攻撃を仕掛けるぐらいのことはするなあ」とか思う。そう思うことと、「裏で何かが仕組まれている」と想定する権力者共同謀議論まであと一歩だ。
私が理解できないのは、「実は報道されていないが、こういう正義の戦いがあちこちで実践されているのだけれども、世界の混乱や人々の精神状態を考慮して、それらの正義の戦いは隠密裏に行われているが、いつか全世界の人々に、その全容が明らかにされ正義が実現する」という類の権力者共同謀議説だ。
■秘密裏に正義を行使中という「ユートピア志向権力者共同謀議論」いくつか
たとえば、ネット検索していて私の目にとまった記事やソーシャルメディアの最近の投稿に、以下のようなものがあった。
◆2021年1月25日午前3時にホワイトハウスの地下施設壊滅作戦があり、ホワイトハウス停電後に、地下施設に監禁されていた子どもたちが救出され、児童性的虐待に関与した議員の大量逮捕があり、作戦終了後の朝6時に花火が打ち上げられた。
◆2021年1月21日以降にアメリカ合衆国の各州で停電が頻発しているが、それらは軍によるディープ・ステイトの地下組織壊滅作戦だった。地下施設に監禁されていた子どもたちが救出された。
◆子どもたちが虐待されるときに出すホルモン(アドレノクロム)が抽出されて、それは若返りに目覚ましい効果があるということで、世界中の貴族や政治家や俳優たちが摂取していた。しかし、子ども救出作戦のためにアドレノクロム不足に陥った貴族や政治家や俳優たちは若さを維持できず容姿が劣化した。それを隠すために精巧なゴムマスクをつけて、人前に出るようになっている。ゴムマスクを見破れ!
◆2020年暮れから日本駐留米軍は、「XXフィルム作戦」と称して地下施設に監禁されていた子どもたちを救出した。2021年2月4日に富士山麓のアドレノクロム工場破壊を合図にトランプに味方する日本駐留米軍が、日本の政治家の9割と芸能人の半分以上を逮捕開始した。彼らや彼女たちが逮捕されたことは秘密になっていて、逮捕者たちはゴムマスクを着用した影武者が演じている。ゴムマスクを見破れ!
◆トランプとプーチンと習近平は協力して、カバール(ディープ・ステイト)を倒す。そこにインドのモディも協力する。トランプとプーチンが習近平を支えて、中華人民共和国内のディープ・ステイト勢力(江沢民派)を倒し、中国を民主化する。
◆森喜朗元首相の女性差別発言があれほど炎上したのは、森氏に反ディープ・ステイトの台湾やプーチンとのコネクションがあるから。ディープ・ステイト傘下の日本の大手メディアは森氏を排除したかった。