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結婚・離婚・再婚を経験した母が娘へ伝えたいこと。

「人生の荒波」を超えるたった一つの態度

結婚・離婚・再婚を経験した母が、3度の結婚に挑戦し50代になった娘へ伝えたいこととは。作家・井上ひさし氏の元妻で、評論家の西舘好子さんが、娘・井上麻矢さんにあてたメッセージをふたりの共著『女にとって夫とはなんだろうか』から紹介する。

■結婚、離婚、再婚を経験して…

 結婚は判断力の欠如
 離婚は忍耐力の欠如
 再婚は記憶力の欠如

 と言われるそうだが、その全部を経験している私からみれば、そのいずれも結果論にすぎない。人生幕を閉じるまでは答えなど出せはしない。

 所詮一人では生きていないのだから、たくさんの人と交わり関わりあって毎日は織られていく。自分の人生が一人では決められないのが当たり前、だからこそ誰もが悩んだり間違えたりするのだろう。が、その中で誰かと寄り添
える人にめぐりあえばオンの字というものだ。

母・西舘好子(写真左)から娘・井上麻矢(写真右)へ 今こそ本当に伝え合いたい「愛情の遺伝」

 この本の共著となった娘の麻矢も私と同じように結婚、離婚、再婚を経験した。しかも私より多い三度の結婚に挑戦し、いま五〇代に突入している。

 現時点で私は彼女の原稿をまったく読んでいない。

 何事にも相当手厳しいだろうなあ、と予測はしているが、なりふり構わず二人の娘を育てた姿をずっと見つづけてきたせいか、まあ、やわな生き方ではなかったのだから母である私への厳しさも仕方あるまい、何をどう書かれてもと覚悟している。

 私と麻矢の違いは、両親にあたる私たち夫婦の離婚がまったくうかがい知れない事件としてあったのに反し、麻矢は自分の幼い娘たちに離婚の実態を洗いざらい見せてきたことだ。

 私たち夫婦の離婚が彼女の反面教師になったのかもしれない。
 親の蚊帳の外におかれ、離婚への不信感をわが娘たちにはさせないという信念が麻矢にはあったのだろう。

 麻矢の最初の離婚はあっという間のことだったが、以後、母子家庭の柱になった彼女が口を真一文字に結んでうんうんうなりながら子どもを育てるため働いてきた。

 どうやら最後まではつづかずもらえなかった娘たちの養育費、子からは、父親の影は遠くなり、厳しい現実の中で何度も職業を変え、大泣きしながら子育てしていく姿を私も見てきたが、麻矢はなぜかいつも幼かった娘たちといっしょだった。

 恋人ができてもいっしょに連れ歩き、喧嘩の現場も見せ、旅も子連れだった。

 麻矢の長女は従順に母に従い、驚くほどの賢さで幼い時から家庭を切り盛りし、母を擁護したが、次女は長女と違い、赤ちゃんの時から自分を主張する子で母親の配偶者になる人にはことごとく反抗してきた。妻となる人の連子とはうまくいかず、去って行った人もいたが、しかし、母娘の絆の強さはそんな、生活の中からつくられたものなのだ。

 麻矢と私には孫にあたる娘二人の母娘三人の家庭が明るかったのは、最低である自分の姿も麻矢自身が娘たちにさらけ出したせいだという気がしている。泣きわめく、理不尽ともいえる我を通し、しかし娘二人を何より優先し可愛がる、その姿をみて飾りもかなぐり捨てた母親を二人の娘たちは幼いながらも守ろうとしたのだ。麻矢だけではない。祖母の私も二人の孫に励まされ、慰められ、教えられ、生きてきた。

 まったく異なる性格の娘二人は麻矢の生きざまに付き合うことで共に人生行脚をしてきたのだ。そのせいかいまでも壮絶な喧嘩や仲直りを繰り返している私と麻矢の仲裁役はたいてい孫たちだ。

 
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西舘 好子

にしだて よしこ

1940年、東京・浅草生まれ。NPO法人「日本子守唄協会」理事長。大妻高等学校卒業後、 電通勤務。61年、井上ひさし氏と結婚。三女をもうける。82年、劇団「こまつ座」を結成、プロデューサーとして劇団を運営。85年、第二十回紀伊國屋演劇賞団体賞受賞(こまつ座)。86年、井上ひさし氏と離婚。89年、劇団「みなと座」を立ち上げる。95年、第三回スポニチ文化芸術大賞受賞。30年にも及ぶ数多くの演劇の主宰・プロデュースを経て、幼児虐待、DV(家庭内暴力)など、子どもと女性問題への社会活動に取り組む。2000 年、日本子守唄協会設立。現在は女性史の一つともいえる子守唄に取り組んでいる。著書に『表裏井上ひさし協奏曲』(牧野出版)、『こころに沁みる日本のうた』(浄土宗出版)、『家族戦争  うちよりひどい家はない!?』(幻冬舎)など多数。井上麻矢の母。


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