両親の離婚を経験。娘が50代になってやっと気づけたこと。
悲しみを超えるたった一つの覚悟
■母、そして子への想い
そしてこの八年間は、母の愚痴を聞くことが増えて、母の歳を意識し始めた八年でもある。
母はもともと太陽ではなかったのだろうかと思うこともある。
月の人、日々形を変えてまるで手に負えない。時折、ルナティックに後悔にさいなまれているのだろうか……と心配である今日この頃である。
大きな天災、そして人災が起きたこの国、真の指導者が不在のままで生きる時代に突入した。
悲しみを手放し、新しい時代に入ることを怖がらないで進んでほしいと娘たちにそう伝えよう。悪い連鎖を生み出す怒りや恨みや意地悪はすべて一度思い切り捨てて喜びや優しさを受け入れてごらん。生きていくのは大変だけれど、魂の遺伝があるのならあなたたちはママの子だから大丈夫だと励ましてあげたい。
目を閉じるともうずいぶん前に失ったように思っていた我が家の庭が出現する。
美しい木々の葉や美しい花々が一斉に咲いて、五月の風を受けて気持ち良さそうに揺れている。さわやかな季節の中で蝶や鳥たちがその木々を飛び回っている。 ああ失ったと思っていたものはここにあったのだ。自分から捨てさえしなければ、無くなったものはいつか必ずまた私のもとに戻るであろう。
私はむせかえるような緑の中で、大きく深呼吸して安堵する。しばしの休憩を採って今度は喜びを受け入れる……その準備を始める季節がやってくる。
私はこの美しい月に生まれたことを誇りに思う。
〈『女にとって夫とはなんだろうか』より構成〉
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