50代無職独身男が身につまされた「ミッシングワーカー」問題
【隔週木曜日更新】連載「母への詫び状」第十九回
■介護をしていると、社会と隔絶される
自分自身も経験がある。介護生活を送っている間は、外見など気にしないし、気にする余裕がないから鏡も見ない。
ある日、親戚が見舞いに来て、父または母と一緒に写真を撮る。ついでにぼくも写る。すると、その写真を見せられて、ガク然とする。
「この隅っこに写っている、白髪混じりのさえないおっさんは誰だ? そうか、これが今のぼくの姿なのか……」
顔に締まりがなく、ほほのあたりが以前よりたるんでいる。いつのまに白髪が増えたのかも、自分で気付いていない。こんなに急に白くなるなんて、まるで『あしたのジョー』の矢吹丈と闘ったホセ・メンドーサになった気分だと、おっさんしかわからないネタをはさんでいる場合ではない。
あわてて鏡を見ると、歯まで黄色くなっていた。自分の歯を磨くより、親の入れ歯を洗うことが先だから、おろそかになってしまう。
介護をしていると、社会と隔絶される。この感覚はすごくよく理解できる。
誰にも会わないわけではない。病院へ行く。介護施設へ行く。訪問看護の人が来る日もある。それでも、自分がいま暮らしている家-病院-介護施設という限られた生活環境は、一般社会の外にあるという感覚。何ひとつ生産的な活動をせず、閉じた場所で毎日生きているという〝社会に参加していない感〟だ。