キケロ。覇権を握れず、非業の最期を遂げた哲学者
天才の日常~キケロ篇
一連の活躍で名声は高まり、出世街道を駆け上がったキケロは、若干42歳にして公職の最高位にして国家元首に相当する「執政官」の地位を選挙で勝ち取ることとなる。
当時の選挙では、大金をバラまくことで票を集めるのが普通だった。それに対してキケロはほとんどお金をかけなかったと言われているので、人望は相当なものだったのだろう。
だが、同時期に頭角を現し始めていたカエサルとの因縁が深まっていくのもこの頃のことである。
執政官としての1年間の任期の最後に、ローマを揺るがす大事件が起きた。
かつてキケロに辛酸を嘗めさせられたスッラの元部下で、キケロと執政官選挙を争い敗北したカティリナが、武力によってローマを乗っ取ることを企んだのである。この陰謀には、カエサルも一枚噛んでいたとも言われている。
カティリナの陰謀を察知するやいなや、キケロはすぐに証拠を集めさせ、元老院においてカティリナを弾劾する演説を行い、ローマからの追放処分を決めさせた。その後再びカティリナ一味によるクーデターの動きがあったため、一味を逮捕し、即刻死刑に処するよう訴えた。対して、カエサルはカティリナ一味を死刑にはせずに財産没収処分に留めるように訴える演説を行う。だが、元老院の実力者であった小カトーの演説によって死刑が決まり、すぐに刑が執行された。
この「カティリナ事件」では、カエサルに対してキケロが勝利を収める形となった。だが、二人の因縁は以降、長く続いていくこととなる。
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