清水英斗氏が注目する「ユーチューバー兼ライター」とは?
職業としてのサッカーライター③
■「すっからかん」になる怖さ
そこには危機感もあった。清水さんは、2012年『サッカー「観戦力」が高まる』(東邦出版)を上梓、同書はベストセラーとなった。切り口の斬新さとタイトルのキャッチーさと相まって、「観戦力」=清水英斗というイメージが強烈についた。以後類似テーマの仕事の依頼が殺到するように。そこで「すっからかん」になってしまう怖さがあったという。
「『観戦力』が売れて実績がかなりできました。それからの1~2年、色々な人から『観戦力みたいな記事書いて』『観戦力みたいな本を書いて』と言われて。それに応えていくうち自分の中がすっからかんになっていく感覚があったんですよね。そういう中で自分が苦手だと思う、(サッカーの)歴史に関する話、監督に関する話、審判に関する話…どんどん手を広げていったんですよね」
苦手分野の仕事は多少ギャラや条件が悪くても積極的に受けたという。こうした姿勢がライターとしての成長につながった。それは、ひょっとしたら日本代表選手のスタンスにも通じるところがあるとも。
「実際ハリルジャパンで成長していった選手…槙野にしろ、川島にしろ。ハリルさんの戦術、デュエル、縦に早く、相手の裏を取る、というところを『苦手』で終わらせない。そこにチャンスを見出して、拾っていった選手が成長している。そしてその成長があるから監督が変わっても対応できるんです。僕もそういう感覚は持っているんじゃないかな」
自分の強みはしっかりと作りつつも、それに頼らず常に新たなチャレンジを続けるのが、清水さんを一流のライターたらしめている所以だ。ちなみにいまは、サッカーと推理小説を絡めたものを書けないかと考えているそうだ。
■Leo the footballに注目
最後に少し業界的な話を。これからサッカーライターのあり方は変わっていくのだろうか。紙媒体の衰退、本が売れないという背景もある。これまでの紙の本・書店だったのがウェブ、そして最近はユーチューブへ、届ける場所はどんどん変わっている。清水さんは若い世代がどういうアプローチをとるのか、興味を持っているという。
「最近、エル・ゴラッソの仕事でLeo the footballという人と話したんですけど、彼はユーチューバー兼ライター。毎日毎日動画をあげていく。あーなるほどと思いました。僕の時代は、多くの人に届ける場所は書店だったけど、YouTubeというので広がっていくんだという。もちろんイメージはあったけど、実際にやっている人に初めて会った。そこである程度認知されている人はどういうやり方をしているのかなという興味はあるし、そこは見ていますね」
そんなLeoさんを見て、清水さんも刺激を受けている。発信の仕方を変えるのか、内容を変えるのか――。新たな境地への「戦略」を練っているところだ。
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