サッカーライター経験ゼロでドイツに飛んだ男のキャリア戦略
職業としてのサッカーライター①
■文学少年ではなくバリバリの理系
「決して文学少年ではなかった」と語る清水さん。むしろその経歴はバリバリの理系である。大学は日本初のコンピュータ専門大学として知られる会津大学。コンピュータをみっちり4年間学んだ。新卒の就職活動で狙ったのももっぱらIT系やゲーム会社。なんと受験していた任天堂は、最終面接まですすんだという。結局卒業後はシステムエンジニアの道にすすみ上京。
ただ、実は在学中からプログラミングが性に合わないと感じていた。
「コミュニケーションが取れないので、コンピュータは一方的にエラーを返してきます。その内容もよくわからなくて、解析しないといけない。そんな繰り返しにイライラして、だんだん面倒くさくなった」
入社してからもずっとこの仕事をするのかという思いがあった。一方東京に出るとそこには、大学から本格的にハマっていたサッカーの仕事をめざしている人が沢山いた。「自分もなにかサッカー関係の仕事をしたい」そう思った清水さんはスポーツ系のTV制作会社の門をたたく。
「色々サッカーに携わる仕事がありますけど、自分は指導者タイプではないと思った。その当時は。好奇心が強かったので、メディアがいいかなと。で、当時は文章を書くというタイプでもなかったからTVの方に行きたかったんです」
そこでは1年ほど働いたが、イメージとのギャップも見えてきた。
「サッカーのことをやりたいと思っても、TVであればその内容を決めるのは局の人。制作会社はそれに沿って仕事をする“技術屋”です。この世界では、自分のやりたい方向で仕事はできないなと思いました。でも書く仕事なら、やりたいことは1人か、あるいは少人数のフットワークで実現できる」
ここで、「書く」という選択肢が生まれることに。しかし、それまでライターの経験があったわけでもない。サッカー選手としての実績があるわけでもない。なにか“強み”がなければ価値を生み出せない。そう考えた清水さんはいきなりドイツに飛ぶ。