サッカームラ以外を狙う。ライター清水英斗氏が意識する“ふくらみ”
職業としてのサッカーライター②
■“ふくらみ”のある書き方を意識
想定する読者も、決してサッカーのコアファンだけでない。一般のビジネスマンの場合もある。
「書くたびに新しい読者に届けようと思っていて。例えばこういう書き方をすれば40代の管理職に刺さるな、今就職活動中の人に刺さるなと。どういう角度から拾っていくかは結構考えたりしていますね」
排他的な“サッカームラ”だけに刺さるものではいけない。日本では、今回のようにW杯の代表戦のときは観るというライトファンと、普段からJリーグや海外サッカーを追っているコアなファンがいて、両者の間には大きな壁がある。
「(コアファンがサークルを作るのは)悪いわけじゃないんですけど、それがムラ化してほしくないなって。そこの壁はとっぱらいたいと思っているんですが、現実は全然そうなっていない。そこに一番無力を感じますね。『私サッカー詳しくないんで…』と遠慮してしまう人がすごく多い。そこはもっとなんとかしたいなって思っているところです。
でも自分の場合、記事を書いていて意外な人に刺さったりするんですよ。面白い監督のエピソードがIT企業の営業をやっているビジネスマンに刺さったり。自分が置かれている特殊な状況に刺さるテーマというのはやっぱりあって。だから“ふくらみ”のある書き方をしていかないとと思っています」
そうした姿勢は著書の独特の切り口にもあらわれている。『実況! 空想サッカー研究所 ~もしも織田信長が日本代表監督だったら~』という本もそうだ。これだ小学生向けに、楽しい空想のストーリーとサッカーをかけ合わせた1冊。
「基本児童書で、彼らにサッカーの“ふくらみ”を知ってほしいなと。そうやって書いたら版元の方にも、『サッカーってすごく広くて面白いですね』と言ってもらえて。まさにそういう感想が得られればいいなと思っていたんです」
サッカーはわたしたちが思っているより、ずっと敷居が低くて、そして広い――。そのことを清水さんの文章は気づかせてくれる。
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