新型コロナウイルス感染拡大を阻止できた勝ち組と失敗した負け組【篁五郎】
■イギリスとニュージーランドはいかにコロナを抑え込んだのか?
続いての勝ち組はイギリスである。
イギリスは昨年の今頃はジョンソン首相が「コロナなど大したことない」と高をくくる発言をしてロクな対策をしておらず、医療現場で感染を防ぐための防御セット(マスク、メガネ、ケープ、手袋など)も大幅に不足した。「ロックダウン(都市封鎖)」の導入も遅れ、3月23日の最初のロックダウンまでに大量の感染者を出した。第1派では死者の大半が高齢者施設にいた高齢者や職員が亡くなるという悲劇的な展開へと向かっていった。
夏には一時的に感染が収まったかのように見えるが、日本でいう「 GO TO EAT」のような外食奨励政策が再び感染を拡大させ、変異種も発症させてしまいロックダウンへと入った。
しかし、ワクチン接種が国民全体へと広がり、徐々に感染者は減っていき、4月12日以降はすべての小売店の営業が許されたほか、美容院、理髪店、レストラン、パブも久しぶりにオープンできるまで回復してきている。
変異種まで発症させた国の中ではかなりの回復傾向にあり、副作用の問題はあるものの自国のアストラゼネカ社製ワクチンが完成したのが功を奏している。
ジョンソン首相は自身がコロナに羅漢をして退院をした際のビデオメッセージで「Thank」を8回も使い、医療従事者へ感謝の言葉を発して賞賛を浴びたが、現在は昨年11月に「再びロックダウンするくらいならば数千の遺体が積み上がったほうがマシ」と発言したと報道され、与野党、マスコミ各社から猛批判を浴びている。
喉元過ぎれば熱さを忘れるとはこのことかもしれない。
第三の勝ち組として挙げたいのがニュージーランドだ。元々感染の中心地であるユーラシア大陸から離れており、感染者数自体も5月4日現在、2622人と少なかった。
ところが、世界的に初期のパンデミックが起きて国内の感染者が数十人出たときにいち早くロックダウンを実行。国境を封鎖し、渡航者全員を強制隔離し徹底的に接触者追跡を実施した。その成果もあって2020年5月2日から「102日間連続」で、国内の新規感染者数ゼロを記録し、6月8日にはアーダーン首相が国内から新型コロナウイルスを一掃したと宣言した。
それでも手を緩めることなく、手洗いなどの基本的な行動のほか、国境封鎖、公共交通機関でのマスク着用の義務、自分がどこに行ったかを記録するための追跡アプリ「NZコーヴィッド・トレーサー・アプリ」利用の奨励し、8月上旬まで新規感染者は国外からの入国者のみに抑えてきた。
現在は、ソーシャルディスタンスどころかマスクの着用義務さえない。
いわゆる「コロナ前」と同じ風景だが、店のウインドーや、一歩店内に入ったところにQRコードが貼られ、除菌用ジェル入りボトルと、名前と連絡先を書く紙とペンが置かれているところが違っている。
今年の4月下旬には国内人気アーティストのコンサートが、最大都市オークランドの野外競技場で行われ、観客5万人を動員しており、完全なる勝ち組と言える。