「コロナ禍の不自由さ」を福沢諭吉ならどう考えたか?【中野剛志×適菜収】
中野剛志×適菜収 〈続〉特別対談第1回
適菜:今の日本で真っ当な保守思想を唱えている人間は、ほとんど死に絶えている。バカが保守を自称するので、世間的には「保守=バカ」ということになってしまっている。それでも保守を死滅させてはならないと考えている人は瘠我慢しているのかな?
中野:今の保守論壇の中に、そんな立派な人、いるんですかね?
適菜:保守論壇とか言っているけど、頭のおかしい連中ばかりでしょう。
中野:頭のおかしい連中と言えば、適菜さん、最近『コロナと無責任な人たち』(祥伝社新書)を出されましたね。
適菜:新型コロナに関してデマを流し続けてきた連中がいます。 新型コロナで重症化するのは老人だけ、基礎疾患がある人だけ、若者は大丈夫、騒ぎすぎ、ただの風邪のようなものとか。でも、若者が重症化したり、死んだりするケースも増えている。後遺症の問題もある。専門家の間でもいろいろな議論があったのに、今回はズブの素人が大声をあげて、デタラメなことを言い出した。現実を直視できなくなり、そのうち説明も支離滅裂になり、陰謀論にすがりつく人も現れた。これは危ないなと思ったので、一度経緯を振り返ったほうがいいと思い、『コロナと無責任な人たち』にまとめました。いい加減なことを散々言いながら、平気な顔をして、しらばっくれている連中は多いですからね。
中野:我々と佐藤健志さんの鼎談で話題になった藤井聡・京大教授の名前が出ていなかったのが、意外でしたね。一章分もうけてもよかったんじゃないですか。
適菜:たしかにそのとおりです。ネットでも同様の指摘は多かったです。そこは反省しています。今回の本は主に政治家を対象にしたのですが、ド素人は基本的に外したんですよ。小川榮太郎についても論及していませんし。
中野:なるほど。論じる価値もないと。
適菜:でも、この中野さんとの対談では、藤井聡という名前を出して批判していこうと思います。危機に直面したときに人間はどのように振る舞うのかという問題を考える上で、非常に参考になる事例だと思いますので。
(続く)
著者紹介
中野剛志(なかのたけし)
評論家。1971年、神奈川県生まれ。元京都大学大学院工学研究科准教授。専門は政治思想。96年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。2000年よりエディンバラ大学大学院に留学し、政治思想を専攻。01年に同大学院にて優等修士号、05年に博士号を取得。論文“TheorisingEconomicNationalism”(NationsandNationalism)でNationsandNationalismPrizeを受賞。主な著書に『日本思想史新論』(ちくま新書、山本七平賞奨励賞受賞)、『TPP亡国論』(集英社新書)、『日本の没落』(幻冬舎新書)、『日本経済学新論』(ちくま新書)、新刊に『小林秀雄の政治哲学』(文春新書)が絶賛発売中。『目からウロコが落ちる奇跡の経済学教室【基礎知識編】』と『全国民が読んだら歴史が変わる奇跡の経済教室【戦略編】』(KKベストセラーズ)が日本一わかりやすいMMTの最良教科書としてベストセラーに。
適菜収(てきな・おさむ)
作家。1975年山梨県生まれ。ニーチェの代表作『アンチクリスト』を現代語にした『キリスト教は邪教です!』、『ゲーテの警告 日本を滅ぼす「B層」の正体』、『ニーチェの警鐘 日本を蝕む「B層」の害毒』、『ミシマの警告 保守を偽装するB層の害毒』、『小林秀雄の警告 近代はなぜ暴走したのか?」(以上、講談社+α新書)、『日本をダメにしたB層の研究』(講談社+α文庫)、『なぜ世界は不幸になったのか』(角川春樹事務所)、呉智英との共著『愚民文明の暴走』(講談社)、中野剛志・中野信子との共著『脳・戦争・ナショナリズム近代的人間観の超克』(文春新書)、『安倍でもわかる政治思想入門』、清水忠史との共著『日本共産党政権奪取の条件』、『国賊論 安倍晋三と仲間たち』、『日本人は豚になる 三島由紀夫の予言』(以上、KKベストセラーズ)、『ナショナリズムを理解できないバカ』(小学館)、最新刊『コロナと無責任な人たち』(祥伝社新書)など著書40冊以上。「適菜収のメールマガジン」も配信中。https://foomii.com/00171