早朝5時出社、上司を完コピ。前田裕二の証券マン時代
SHOWROOM創業者・前田裕二さんインタビュー①
■近くにいる“ビートルズ”を探して完コピする
数多いる上司のなかでも、前田さんが完コピを目指したのは、彼の入社当時に所属した部署でヘッドを務めていた“宇田川さん”だった。著書の中でも、宇田川さんについて「心から盗みたいと思えるスキルをたくさん持った人」と、綴っている。
「宇田川さんの喋り方・口癖から、電話のテンション、身振り手振りや、ノートや持ち物に至るまで、本当にすべてマネしました。自分の周りで1番成果を出していて(つまり最大の収益を会社にもたらしていて)、尊敬していた宇田川さんをとにかく模倣していったんです。読者の皆さんの周りに、いま、目標としたいと思える人がいればそれはとてもラッキーです。その方のスタイルを徹底的に吸収することが、成功への近道だと考えています」
「ゴールにたどり着くための答えが身近にあるなら、遠回りする必要はない」と、前田さん。そして、彼は今も「宇田川さんの背中」を追っていると語る。
そして「成功者の模倣が独自性の基盤を作るという構造は、バンド活動にも通ずる」という独自の理論を展開する。
「楽器習いたてとか、バンド結成直後は、そのジャンル内で王道かつ確立しているアーティストの曲をコピーする人たちが多いですよね。例えば、洋楽ならビートルズだし、ロックならブルーハーツといった具合に。ビートルズの曲は、ファクトとして、全世界の人の心に刺さっていることが“間違いない”存在です。何かで卓越した存在になる為にまず、そのジャンルで卓越した存在を徹底して真似るということが、近道だと思います。良質な曲をコピーしていく過程で、徐々に、人の心に届く歌の『型』が自分の中で構築されてくる。そうして次第に、良いオリジナル曲が作れるようになる。つまり、まずはコピーの積み上げが重要で、そのあとで、素晴らしいオリジナルのアウトプットが生まれ始める。僕にとっての卓越した真似すべき存在、すなわちUBSにおける『ビートルズ』が、宇田川さんだったんです」
自分を構成する「個性」の要素は、必ずしも生まれながらに備えているものだけだと諦めなくて良い。成功者を徹底的に見つめ、知り、要素を洗い出し、必要に応じてそれを模倣することで、自分の個性として新たな要素を体得することができるのだ。この手法はバンドや働き方だけでなく、ビジネスの立ち上げにも応用できると、前田さんは語る。
「例えば僕ら起業家なら、成功している先輩起業家から、どんどんコツを聞いて、それを盗み取ってアクションに落とすのが早い。先日、メルカリの小泉社長に、組織や人事評価制度作りのお話を伺ったのですが、本当に目から鱗の連続で、こういった学びを自身の体験を通じて会得しようとしたら、どれくらい時間がかかるんだろう、とぞっとしました。今、彼らが急成長している背景の一つには、ここまで幾重にも重ねてきたチャレンジや失敗の絶対的物量があります。特に小泉さんや会長の(山田)進太郎さんは、これまでに何度も起業を経験する中で、明確に落とし穴の場所を知っている。スピードアップしたいなら、臆せずプライドを捨てて、成功者にどんどん質問していくべきだと考えます」
前田さん自身も、SHOWROOMを立ち上げて以降、何度も落とし穴に落ちそうになったことがあるそう。そうした経験を経て得たノウハウは、それを必要とする人たちに全力で伝えていきたいと話す。
「起業にまつわるトラップが可視化されれば、日本のベンチャー市場全体の競争力が上がっていく。ワクワクしませんか?」
模倣をすることは、あくまで第一段階。圧倒的な模倣量を経た上で、最終的には自分をユニークな存在にするような”something original”を見出すというのが、前田流の成功への最短アプローチ方法だ。
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