本が売れない時代の届け方。ベストセラー編集者に聞く。
出版社名で本を買う読者はいない。『拝啓、本が売れません』特別編①
■ベストセラー編集者に聞いた。
話を聞かせてくれたのはピースオブケイクの代表取締役CEO・加藤貞顕さんだ。編集者でもあり、累計発行部数280万部を記録した岩崎夏海さんの『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』の担当編集でもある。2011年にピースオブケイクを設立し、堀江貴文さんの『ゼロ』や平野啓一郎さんの『マチネの終わりに』などを担当した。
「最近、自分が書店に行く回数が減ったなあ、って思います」
『拝啓~』の内容と今回の取材の趣旨を説明すると、加藤さんはおもむろにそう言った。
「額賀さんが書くエンタメ青春小説は売りやすいジャンルだと思うんですが、それ以上に文芸というのシュリンクぶりが激しいんでしょうね」
そこからひとしきり「本が売れないね」という話をして、私は自分の本に碌に重版もかからないし、初版部数もどんどん減っているし、という話をした。
「昔は、本が出たら新聞広告を出して、電車広告もやって、それで認知されて売上に繋がっていたんですが、今はネットで露出することが認知につなげる最重要な広告だと思います。多くの出版社がオウンドメディア(企業が運営するメディア。例えばホームページ、ブログ、SNSアカウントなど)を使ったコンテンツの発信に力を入れていることからも、時代の変化を感じます」
「けれど、ネットでの宣伝が上手くいかないことも多いですよね。内容云々の前に、そもそも見られていない! とか。いろんな出版社が自社サイトで本のPRをしたり販促のための企画を打ち立てたりしてますけど、上手くいかない要因はどこにあると思いますか?」
「出版社の宣伝ページが見られない理由の一つとして、読者が出版社の名前で本を探してないからではないでしょうか。たとえば、『額賀さんの本を買おう』とか、『何か面白い本はないかな』という気持ちで書店に行く人は多いと思いますが、○○出版の本を買いに行こう、という人はどちらかといえば少ないと思いますし」
「うーん、確かにそうですね」