苦しむビジネスマンに送りたい、「困難こそ養分である」という哲学
SHOWROOM創業者・前田裕二さんインタビュー③
■仕事が楽しくないときに試す、2つの解決策とは
2012年にアメリカから帰国後、DeNAでの修行期間を経て、2013年に「SHOWROOM」を立ち上げた。そのスピード感は目を見張るものがある。証券マンだった時代から、そのすべてを仕事に捧げている前田さんは、どのように仕事へのモチベーションを保っているのだろうか?
「何のために仕事をするのか、が明確になっている点が大きいと思います。僕の場合は、逆境はむしろバネとなり、その弾みで高みに登れる事を自分の人生を通じて証明するため、といった目的意識が強烈にあります。もちろん、この感覚が全人類に共通するものではありません。自分にとっての“仕事”がどんな存在なのか、を見つめなおしてみると、ある程度モチベーションをコントロールできるかもしれません」
たとえば「仕事が楽しくない」と感じ、モチベーションが下がっている場合の解決策は2つある、と前田さん。
「ひとつは、今向き合っている仕事をゲーム感覚で捉えて楽しめる方法を探ること。例えば社会人1年目でコピー取りを任されたとき、ホッチキスの針を留めるのにかかる時間を最小化するために色々工夫をして、毎回ストップウォッチで計って一回ごとの時間を減らすようなゲームを1人でやっていました(笑)。いつもゲーム感覚でホチキスを留めていました。おそらく、見る人によってはなんてことない、取るに足らない仕事ですよね。世界は自分の写し鏡。自分が楽しい世界だと思えば楽しいし、つまらない仕事だと思えばそうなってしまいます。まずは、今の仕事の中に小さな楽しさを見出すことにトライできると、すぐに変化が起きると思います」
仕事は楽しくない、と切り捨てる前に視点を変えてみる。とても手軽なので、明日にでも 実行に移せそうだ。
それでも仕事の楽しさを見いだせないならば、2つ目の解決策として「仕事を変えることも視野に入れるべき」と前田さん。
「新たな職を探すときに指標となるのが、経済報酬と意味報酬です。経済報酬とは、その名の通り、労働時間を提供した分だけ契約通りのお金をもらうこと。自身の労働力に見合った給料をもらうことに重きを置く場合、給料は外せない条件ですよね。ただ、もう一つ忘れてはならない報酬があり、それは『意味報酬』。端的に言うと、自分が社会に対して果たしている意味や役割を実感する事で得られるリターンです。経済的に社会が豊かになっている今、人の幸福度はこちらが左右すると思っています」
仕事へのやりがいを求める“意味報酬”。とくに、若い世代ほど後者の意味報酬を求めて仕事を選ぶ傾向があるという。
「今の日本は、精神的にも経済的にもハングリーになるのがとてもむずかしい国です。安くておいしい牛丼や立ち食いそばがそこらじゅうにあって食には困らず、服も安価で手に入り、住まいのコストも下がっていく。シェアリングエコノミーも拡大の一途です。つまり、そこまで一生懸命にならなくても、一定豊かに生きていく事ができる。この、枯渇しようがない時代で、若い人が求めているのは、“意味”なんだと思います。そのため、近年は社員や社会に意味報酬を提供できる企業やコミュニティが力を持つようになっているし、この流れは止まらないと思います」
そして「SHOWROOM」もまた意味報酬を極めて大切にしており、「努力が報われる社会を作る」という企業理念を掲げて、同じ価値観を持った仲間で大海原を航海している。SHOWROOMがここまで多くの仲間やユーザーを惹きつけるビジネスに成長しているのも、このシンプルながら力強い理念があってこそ、なのだろう。
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