薬の処方、精神科に入院…介護施設の現実は。
【隔週木曜日更新】連載「母への詫び状」第二十二回
■怒りっぽい人は薬で“調節”される
「施設の人が一番困るのは、入所者同士がケンカしたり、暴れたりすることだからね。特に認知症は怒りっぽい人が多いから、少しでもそのケがあると、厳しく管理される」
これも父を特養に入れると決まったときの、おばさんの言葉です。確かにそうであろうことは、想像してみればわかります。たくさんのお年寄りが集まって集団生活をしているのだから、怒りっぽい人や暴力的な人は厄介者でしょう。
「そういう人はね、薬で“調節”することになるんだよ。ちょっと強めの薬を飲まされて、おとなしくさせられて、だんだん強い薬になって、もぬけの殻みたいになってしまう。元気だった認知症の人が、施設に入ったらあっというまに元気がなくなって、魂を抜かれたみたいに変わったなんて話は、いくらでもあるんだから」
いやいやいや、おばさん、それは言い過ぎでしょうと、私は反論しました。
薬を飲ませるといっても、どんな薬を処方するかは医師が決めることで、介護士さんは指示通りに薬を服用させるだけです。薬の調節は施設がやっているわけではない。
そもそも施設と一口に言っても、老健(介護老人保健施設)と特養(特別養護老人ホーム)はだいぶ違う。老健はリハビリ目的なので、医師がいて医療行為も行われるけど、特養は終の棲家という位置づけなので、常駐の医師がいない場合もある。その辺は一緒にして語ってはいけないだろうという違いもあるわけです。
ただ、私も父と接してみて、認知症の患者の“元気度”をコントロールするのは大変だろうなというのは想像がつきました。元気な日と、まるで元気のない日が、不規則にあらわれる。