究極のオールラウンダー。「イギリス駆逐艦」万能の活躍 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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究極のオールラウンダー。「イギリス駆逐艦」万能の活躍

「艦隊のワークホース」こと万能軍艦の実像に迫る!③

■ありとあらゆる任務に八面六臂の活躍

 ただし、例外的に大型艦隊駆逐艦のトライバル級のようにコサック、エスキモー、グルカといった世界各地のトライブ(部族)の名称が冠された級や、小型の護衛駆逐艦ハント級のように旧跡、古城、湖沼などの名称がランダムに冠せられた級なども存在する。

 特に興味深いのはタウン級だろう。これは、第一次大戦時に建造されてアメリカ海軍が運用していた4本煙突のフラッシュデッカー(平甲板型)と総称されるコールドウェル級、ウィックス級、クレムソン級の類似した3級の旧式駆逐艦を、イギリス側がまとめて呼ぶために付与した級名である。

 第二次大戦の勃発で駆逐艦不足に悩んだイギリスは、アメリカの参戦前の1940年9月2日に同国と基地使用権駆逐艦交換協定を結び、イギリス領バハマなどの軍事施設のアメリカの使用権を認める代わりに、これらの旧式駆逐艦50隻を譲り受けたのだ。

 イギリス海軍における駆逐艦は、艦隊駆逐艦によるドイツやイタリアの主力艦に対する雷撃、空母や戦艦の直掩、艦隊の「目」としての索敵、日本海軍の鼠輸送のような兵員や物資の緊急輸送などに加えて、護衛駆逐艦も含んだ輸送船団の護衛や対潜掃討(ハンター・キラー)など、ありとあらゆる任務に八面六臂の活躍を示している。そしてこのへんが、太平洋戦域における日本の駆逐艦の活躍ぶり(夢に終わった日本海軍の「漸減邀撃戦」を参照)とは異なる、海洋大国におけるいわゆるワークホースとしての万能の活躍といえよう。

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白石 光

しらいし ひかる

戦史研究家。1969年、東京都生まれ。戦車、航空機、艦船などの兵器をはじめ、戦術、作戦に関する造詣も深い。主な著書に『図解マスター・戦車』(学研パブリック)、『真珠湾奇襲1941.12.8』(大日本絵画)など。


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