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日本の中間管理職はギリギリの状態だ

なぜ、心が折れる職場になってしまうのか?(前編)

■ハラスメント対策にすり減る神経

 今どきの中間管理職は、業務のことだけを考えていればいいわけではありません。

 最近は、企業がセクハラやパワハラによるトラブルに敏感になっています。一般的に加害者になるケースが多い上司たちに対して、部下との接し方についてさまざまな指導や注意がなされています。

 セクハラやパワハラがないよう注意するのは当然ですが、職場がハラスメントに対して過敏である傾向も否めないと思います。

 たとえば、男性上司と女性部下が何気ない雑談をしていたときに、当人同士にセクハラとの認識はまったくなかったのに、それを聞いていた別の女性社員が「あの上司の言葉は不愉快だ」という理由で、社内の人権啓発室にメールで告発したという話すらあります。

 このケースではセクハラはまったくの誤解でしたが、普通の会話すらハラスメントと疑われる状況に対し、「そこまで気をつけなければいけないのか?」という上司側の困惑はよく耳にします。

 ハラスメントへの意識が過剰になり、「部下が嫌がることはすべてハラスメントだ」という極端な考え方が広まれば、ただでさえ心に余裕がない中間管理職をさらに追い詰めることになりかねません。「部下からハラスメントだと訴えられるのはごめんだ。部下と関わるのは控えよう」という心情も理解できなくもありません。

 ここまで見てきたように、中間管理職は現場仕事とマネジャー業務をこなし、個人ノルマも達成しなければならないうえに、セクハラやパワハラにも神経を尖らせなければなりません。しかも、プレイングマネジャーとしてチームの業績に大きく貢献しているにもかかわらず、結果への責任だけ負わされて、仕事への十分な裁量が与えられているわけではありません。むしろ上からの無理難題や気まぐれ・思いつきに振り回されている──。

 この状況を、今、中間管理職を務める40代半ば以降のみなさんが働き始めた頃は、想像もしなかったのではないでしょうか。

初出:『なぜ、心が折れる職場になってしまうのか?(第1回)』ほんきになるWEB 2016年9月1日配信記事を、改題し再構成しました。

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前川 孝雄

まえかわ たかお

(株)FeelWorks代表取締役/青山学院大学兼任講師

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「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベスト新書)

大阪府立大学、早稲田大学ビジネススクール卒。リクルートを経て、2008年に「人を大切に育て活かす社会づくりへの貢献」を志に起業。「上司力研修」「育成風土を創る社内報」「人を活かす経営者ゼミ」などを手掛け、約300社で人が育つ現場づくりを支援。自らも年間100本超の講演、TV番組、雑誌に出演。YAHOO! 「前川孝雄の人が育つ会社研究室」など連載も数多く持つ。


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