周りの粒々は種じゃない? 栃木県民も知らないイチゴの真実
周囲についた粒々の正体は...
■正解は「痩果」
栃木県出身の漫才コンビ「U字工事」のネタには、仁井田一郎という人物が登場する。「イチロウ」という名前から野球のイチロー選手かと思えば、栃木でイチゴのビニールハウス栽培を広めた偉人として紹介されるのだ。これがオチとなるわけだが、栃木県民でもこの人物が実在するかどうか知らない人は多い。
仁井田一郎という人は、たしかに存在したのである。明治時代に現在の足利市に生まれ、戦後間もなく、栃木県にいちご栽培を導入。こうして栃木は、全国一の生産量を誇るイチゴ王国となった。同氏の功績が称えられたのは県内だけではなく、緑白綬有功章を受章している。
そんな秘話のあるイチゴには、意外と知られていないことがある。それは、周囲についた粒々の正体だ。イチゴといえば、赤い果実の周りに小さな種がついていると思うかもしれない。しかし、種に思えるあの物体は痩果といい、イチゴの果実なのである。
赤い部分は花托といい、花びらやめしべなどを支えるものだ。イチゴはこの花托が大きいため、果実と間違われてしまうのだろう。こうした事実を知ると、「種はどこにあるのか?」という疑問が生じないだろうか。
桃やブドウなどのフルーツは、可食部である果実の中に種がある。イチゴも同様に、タネと思われる果実の中に存在するのだ。この種にはオーキシンという成長を促すホルモンが含まれていて、粒々が多いものほど大きく成長するといわれている。
イチゴにはさまざまな品種があるが、国内のいちご品種取り扱いシェア1位はとちおとめとのこと。甘さと酸味のバランスが絶妙で、全国的に食されている。
このとちおとめは、名前からもわかるように、栃木県で誕生した。栃木では新種の開発を進めており、2014年には「スカイベリー」が誕生。大粒が特徴で、1粒の重さが50gを超えるものもあるほどだ。Mサイズの鶏卵(58g以上64g未満)と同等である。
ショートケーキの上には当たり前のように鎮座し、食卓にはジャムとして登場することが多いイチゴ。これほどなじみ深い果物ではあるが、じつは知らないことが多いものだ。このように、日常にありふれたものの由来などを調べると、意外な事実を発見できるかもしれない。