想像力を刺激する不思議空間・新生姜ミュージアムへ。
辛酸なめ子の脱力ヒーリング紀行
■栃木県・新生姜の浄化スポット
岩下の新生姜ミュージアムがやばいらしい……そんな噂を数年前から聞いていました。冷え性にとっては生姜は重要な食材でもあり、ぜひ行きたいと思っておりました。
ある夏の日、時間を作ってひとりで栃木へ。駅から徒歩20分ほどの、周りはほとんど何もない大通り沿いに突如現れた微妙に重厚感漂う館。
入ってすぐのところに、新生姜ピンクのピアノと、岩下の新生姜の巨大パッケージに入れる写真ブースがあって、既にカオスの予感です。
大量のアルパカぬいぐるみが吊り下げられた入り口を入り、芸能人の色紙コーナーを通って展示室へ。室内は、家族連れで結構賑わっています。
最初はこの国民的商品の開発の過程とパッケージの展示で、企業ミュージアムではありそうな流れです。もとは明治時代は八百屋さんだったそうですが、昭和53年に当時の社長が新しい食材を求めて出張に向かう飛行機内で、台湾産のおいしい生姜と出会い、日本で売りたいと思ったのがきっかけのようです。低温管理を確立し、新生姜は全国区に。
これまでの微妙に違うパッケージが何百種類もパネルに展示。最近になってカロリーが16kcalから14kcalになったのがちょっと気になりましたが……。健康志向はいいことです。
健康といえば生姜の効果についての展示もありました。なぜか電撃イライラ棒で遊びながら、健康効果について学ぶコーナーが。花粉症や吐き気を抑制、生理痛や筋肉痛の緩和、老化防止、冷え改善、消化促進、血流改善などあらゆる効能が。あとは精力増強もあるのかも、と、うすピンク色で筋のようなものが浮き出た生姜オブジェを見て思いました。
頭を入れて撮影できる世界一大きな新生姜ヘッド(5メートル)が鎮座する部屋では、なんと、時間ごとに新生姜ヘッドにプロジェクションマッピングが投影(期間限定で夏季のイベントのテーマは花火)。
部屋が暗くなり、ファンキーな音楽と共に巨大新生姜に花火や宇宙、ロケットなどシュールな映像が投影。後半は「大葉とちくわで巻いて」「例えば豚バラ肉とかき揚げにして……」「タルタルソースと混ぜる」など、曲に乗せてレシピ紹介まで。「あ、タルタルはいいと思う」と後ろの主婦が普通に参考にしてました。
その巨大新生姜ヘッドの奥には「新生姜の部屋」があり、人間サイズの筒状の新生姜がベッドに寝ていたり、椅子に座っていたりしました。一瞬秘宝館かと思いました。チャラい若者グループが「なんかエロい」「モロじゃん」と騒いでいました。想像力を刺激するシルエット。
神社とジンジャーをかけたジンジャー神社でお参りしたり絵馬を書いたりもできます。おみくじを引いたら、「難しいこうショウガ(交渉が)まとまる可能性がある」と、生姜のサブリミナルメッセージが。細部にもこだわっています。
さらに「岩下の新生姜レシピかるた」とか、生姜のコスプレで「恋するフォーチュンクッキー」動画とか、サブカルチャー系の歌手を呼んでライブとか、漫画家のイラスト展示とか、あらゆるカルチャーとつながろうとするアグレッシブさに驚嘆の念を抱きました。やはり生姜のパワーで活動的になれるのかもしれません。
CAFE NEW GINGERでは生姜が入った唐揚げやそうめん、お茶、チーズケーキなどを食べられます。生姜の歯ざわりに背筋が伸びる思いです。ちなみに行った日は風邪気味だったのですが、数時間生姜にまみれていたらいつの間にか治りました。病院代と薬代を考えれば、入場無料のこの施設で風邪を予防する、というのも健康法の一つとしてありだと思います。
「岩下の新生姜ミュージアム」JR両毛線・東武線 栃木駅徒歩12分