今のご時世、時には“悪いこと”もやるべきだ!
岸信介、甘粕正彦、田中角栄たちが、乱世を生き抜いた知恵に学べ!
人間にとって幸せとは何かは、誰しもが無意識のうちにも片時も忘れることのない命題である。だが、よほどの能天気でもないかぎり、これが満たされている場合は少ないはずだ。なかでも働き盛りの人間にとって、自分の仕事の行き先が見えず、生きがいを感じられないことほどつらいことはない。というより不幸の極みである。
そんなとき、正論をもっともらしく無難な言葉や文字で発信する文化人や評論家の類は世間に掃いて捨てるほどいるが、今のご時世、そんな話など何の足しにもならない。そんなときこそ、毒があっても自分の前に立ちふさがる黒雲を一掃させてくれるような、時に世の中の劇薬ともなってきた人物の存在を見逃す手はない。
好悪は別にして、本誌に登場する三人の男ほど、強き本物の日本人にして、決断と実行力を武器に今日のわれわれに熱いメッセージを送ってくれている人間がいるだろうか。
◎コンテンツ
第一章
●怨念を背負った男たち
負の要因を飛躍のエネルギーに
終戦二年目に「日本列島改造論」の原型
田中角栄の敬愛する、山本五十六
相手の顔を立ててから交換条件
岸信介、長州人の反骨精神
甘粕正彦が収監で得た経験
第二章
●男が惚れる男の条件
決断力と行動力
政治家として生まれた男
理屈を抜きにしたカリスマ
国民の目を持つ、剛腕
「すべての責任は私が負う」
たぐいまれな人心掌握術
役人から頼りにされた角栄
土方の現場から得た教訓
才のある人間にはチャンスが来る
権威は敬うが、権力には屈せず
第三章
●金銭哲学
カネの使い方は三者三様
静かに頭を下げてカネを渡す
「札束がオレの前を流れる」
細かいところまで気遣う心
敵を減らすことに意味がある
角栄と甘粕、金銭感覚の共通点
第四章
●人情の機微に通じた男―庶民への目線と気配り
情で人を動かす
悲しみを共有できる心
人の痛みを分かる精神性
庶民の目線に合わせる力
「メシを食う」角栄の流儀
社会福祉に力を入れた岸
食べ物にも三人の持ち味
満州の闇の世界を仕切る男
第五章
●政治哲学
三人のそれぞれの理想
「選挙は戦だ」
天才的ともいえる選挙術
コンピュータ付きブルドーザーと言われた所以
壁を作らず、人の心をつかむ
正論と独特の語り口
飾り言葉は使わない
目配り、気配り、心配り
中国への姿勢の違い
道徳教育に風穴を開ける
経済優先か、福祉優先か
第六章
●それぞれの人生哲学
三人の人生観
プライドと度胸の良さ
「政治家が悪く言われるのは宿命だ」
評価の逆転こそ、男冥利
岸の角栄への人物評価
お洒落も趣味も教養のうち
「サービス精神を忘れるな」
言葉は不要。決断と行動あるのみ
人間を好きになれ
ノーとイエスははっきり言う
実は聞き上手だった岸
「まず相手の言い分を聞いてやれ」
義理と人情を大事にする
女にもてた三人
甘粕が入れ込んだ女
時間にはうるさかった角栄
人生を急ぎすぎた男
三人が経験した刑務所暮らし
本音で言う政治家
<著者略歴>
太田尚樹(おおた なおき)
1941年東京生まれ。作家、東海大学名誉教授。主な著書に「ヨーロッパに消えたサムライたち」(ちくま文庫)、「陸軍大将 山下奉文の決断」「満州裏史―甘粕正彦と岸信介が背負ったもの」「赤い諜報員―、ゾルゲ、スメドレー、尾崎秀実」「愛新覚羅王女の悲劇―川島芳子の謎」「天皇と特攻隊」(以上、講談社)、「東条英機―満州の夢、阿片の夢」「満州と岸信介」(以上、KADOKAWA)、「東京裁判の大罪」(ベスト新書)ほか多数ある。