まだ、「飲みニケーション」とか言っているの?
なぜ、職場改革をしても、社員は辞めていくのか?(前編)
■ピント外れの職場改革の実例
①説得力に欠ける、会社の終身雇用宣言
アメリカの経営学者であるジェイムズ・アベグレン氏は、日本企業の発展を支えてきた三種の神器は「年功序列」「終身雇用」「企業内組合」としました。ただし、近年の厳しい経営環境において、企業が年功序列を維持することは難しくなっており、50代になっても平社員に留まる人が過半数を占めています。
「年功序列」を放棄した企業のなかには「年功序列の維持は困難だけれども、終身雇用は維持している」と主張を変え、従業員の不安や懸念を払拭しようと努める企業があります。
しかし組織の実態を見ると、正社員だけでなく、派遣社員やパートなど非正規雇用者で支えられています。たしかに正社員の終身雇用は守られているのかもしれませんが、その約束は、非正規雇用という調整弁のうえに成り立っているという矛盾があるのです。
たとえば、10人のメンバーのうち5人が非正規雇用という場合、中間管理職は、雇用形態に応じたマネジメントをしなければなりません。非正規雇用の5人には、定期的な契約更改面談をし、業績が厳しければ契約を打ち切ります。そんな様子を横目にする5人の正社員も「うちの事業部そのものが会社から見捨てられ、売られるのではないか」「自分も不安定な雇用契約への切り替えを勧められるのではないか」と心中穏やかではいられません。そんな不安を抱えるメンバーに、「会社は終身雇用を守るから、みんな安心して働いてほしい」と経営層からの伝言ゲームを管理職が訴えても、説得力に欠けるのです。
「終身雇用は守る」と胸を張る会社と、その言葉に安心できない現場。その間でジレンマを感じざるを得ない中間管理職も多いのではないでしょうか。
企業が非正規雇用の比率を高めてきたことで、職場ではこんな矛盾も起きています。
十数年前から会社の中核業務だけを残し、その他はアウトソーシングを進める流れがあります。何が中核業務で、何がそうでないかは判断が難しいのですが、ある企業では本社機能である企画開発部門やマーケティング部門を残し、末端の営業部隊をアウトソーシングしたケースがありました。
その後、何が起きたかというと、顧客ニーズや世の中の変化をリアルタイムに吸い上げるはずの最前線部門を切り出したために、企画開発部門やマーケティング部門に現場の声が届きにくくなり、机上の空論でビジネス展開する事態に陥ったのです。あるいは、顧客を熟知する営業アウトソーシング会社が発言力を増すという主従逆転現象も見られました。
正社員の終身雇用を守るためとはいえ、「お客さま第一」を掲げる企業が営業部隊をアウトソーシングするのはいかがなものかと思います。企業の方針には、一見正しいように思えて、実は現場で矛盾をはらむものもあるのです。
KEYWORDS:
★書店様のご厚意に感謝!
『前川孝雄の"はたらく論"』- アメーバブログ
http://ameblo.jp/feelworks-maekawa/entry-12194501490.html
最寄の書店で、ぜひ、見つけてください!
*在庫切れの場合は、書店注文もできます