【課題は教員確保】少人数学級実現に不可欠な支援と施策を考える
第79回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-
35人学級を皮切りに、段階的とはいえ「少人数学級」実現への機運が高まっている。しかし、そこには「教員が足りない」という大きな課題が存在するが…その改善に向けた進捗はどうなのか。
■教員確保に向けた効果的な支援と施策を
萩生田光一文科相は、小学校での実現が決まった「35人学級」を中学校でも積極的に取り組み「30人学級」の実現につなげていきたい考えを示した。
今年度から5年間をかけて公立小学校での「35人学級」が段階的に実現されることになっているが、その課題を検討するために文科省が5月17日目に開いた、全国知事会など地方3団体と意見を交わす「国と協議の場」(以下、協議会)の初会合の席でのことだった。
文科相は少人数学級の推進に意欲満々のように見える。しかし、それが簡単でないことは、協議会の初会合で示された資料でも明らかだ。
小2についてはすでに教員を加配することで実質的に35人学級は実現されているが、22〜25年度には学級数が大きく増加する。そうなると、この4年間は教員を毎年3,000人ほど増やしていく必要があると文科省は試算している。問題は、それだけの人数をどうやって確保するか、である。
公立小学校の教員採用試験の競争倍率は、2019年度実施(2020年度採用)で全国平均2.7倍と過去最低となっている。小学校から高校までの全体の競争率は3.9倍で、前年度は4.2倍だった。19年度が特別だったわけではなく、競争倍率は全体的に低下傾向にある。
その大きな原因は、受験者数そのものが減っていることにある。2019年度の受験者総数は13万8,042人で、前年度に比べて1万423人減となっているのだ。若者にとって、教職は魅力のないものになっているらしい。
少人数学級を実現するためには、教職志望者そのものを増やすことが不可欠といえる。そこで文科省は、協議会に資料「質の高い教師の確保について」を提出している。これは文科省による教職志望者を増やす方針を示しているものである。
そこでは、まず「小学校の免許状をとりやすくする」というプランが掲げられている。免許取得に必要な総単位数を軽減する「義務教育特例」を設けたり、現職の中学校教員が小学校の免許状を取得する場合の要件を弾力化することも考えるという。簡単に言ってしまえば、ハードルを下げることで小学校教員を増やそうというわけだ。
しかし、免許状で教員の質確保ができるのだろうか。また、文科省が口にしている「教員の質確保」と、どのように整合性をとるつもりなのかは曖昧と言わざるを得ない。
そして、「教師の魅力を挙げ、教師を目指す人を増やす」という課題を掲げ、その解決策として「教職の魅力の向上に向けた広報の充実」を示している。
その方策のひとつが、Twitter上の「#教師のバトン」である。
現役の教員に「教職の魅力」や「やりがい」を発信してもらって教員志望者を増やそう、というのが文科省の狙いだった。ところが実際は、現役教員が学校現場のブラックぶりを暴露する場になってしまった上に、その解消策を文科省は示せていない。これでは、逆効果でしかないようにも思える。
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