「池江璃花子」叩きで思い出す五輪アイドルたち、世間はなぜ悲劇のヒロインを求めるのか【宝泉薫】
■東京五輪は開催か? 中止か? どちらが良いのか?
海外の選手についても、同様だ。女子体操史上最高の名花というべきナディア・コマネチは独裁政権下のルーマニアから米国に亡命。その手引きをした男性との不倫が取り沙汰されたりした。もっとも「妖精」から「魔性の女」へという変身は珍しいことではない。それより、日本のバラエティ番組でしっかりオバサン化した彼女がビートたけしと一緒に「コマネチッ!」を披露した姿にショックを受けた人もいるだろう。
そんな喜劇的な展開に対し、怪談めいているのが史上最速の女子スプリンター、フローレンス・ジョイナーのケースだ。ドーピング隠しともいわれた29歳での引退のあと、日本のドラマで松田優作と共演したりもしたが、38歳で心臓発作を起こし急死。ステロイドの副作用ではとささやかれた。日進月歩で記録が更新されるスポーツ界にあって、彼女が30年以上も前に樹立した百メートルと二百メートルの世界記録がまったく破られそうにないというのも、逆に不気味である。
それにしても、もし東京五輪が中止になったら、世の中の欲求不満はどうなるのだろう。一年延期ということ自体、異例なわけだし、五輪を消費できないまま、コロナ禍に対する不安も溜まりに溜まっている。しかも、次の五輪開催地はその元凶ともいうべき中国の北京だ。そっちの五輪こそ、中止になってほしいと願う人もいるのではないか。
なんだかんだ言って、東京五輪がどうにか開催され、池江のような華のある選手が活躍するほうが丸く収まるような気がしてならない。
(宝泉薫 作家・芸能評論家)
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