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成果があがらない人に持ってほしいトヨタ式「なぜ?」の思考

トヨタ式5W1H思考・カイゼンの極意

仕事でがんばっても成果があがらない時には「なぜできないのか?」「なぜこんなに遅くまで働かなければならないのか?」と、思考を逆転してみてほしい。『トヨタ式5W1H思考 カイゼン、イノベーションを生む究極の課題解決法』の著者、桑原晃弥氏がトヨタ式の「なぜ」の繰り返した先に今とは違う働き方が見えてくる、と明かす。

■ケース1、長時間残業の本当の理由とは?

 

 あなたを含めてみなさんの周りに長時間残業が日常化している人はいないでしょうか? 「働き方改革」が叫ばれる中、「何とか残業を減らさなければ」と思ってはみても、案外できることは限られています。

 結局、隠れ残業をしたり、家に仕事を持ち帰ったりしていないでしょうか? たしかに表向きの残業時間は減るかもしれませんが、これでは本当の意味の改善にはなっていません。そんな時に必要なのはトヨタ式の「『なぜ』を5回繰り返す」やり方です。「なぜこれだけの残業が必要なのか?」と問いかけることで「残業の真因」に気づくことができれば、残業を減らし、そして今よりも楽に成果を上げることができるのです。

 首都圏にいくつもの保育所を持つA社で保育士さんたちの長時間残業が問題になっていました。保育士不足が言われる中、本社も危機感を持って問題を解決しようと、通達を出したり、時間が来たら部屋の灯りを消すといった対策をとったものの、思うように残業は減らないばかりか、仕事を家に持ち帰るという、結果として労働強化につながってしまいました。

「なぜ残業が減らないのか?」と疑問に思ったA社トップはトヨタ式のコンサルタントに依頼して「何が真因なのか?」を分析してもらうことにしました。ポイントは「現地現物」と「白紙になってものを見る」です。

 本社もこれまで改善案を考えてきましたが、いずれも現場での効果は薄いものばかりでした。理由は現場を見ないで机上で考えていたことと、「真因」を調べることなく先入観で「こうしたらいい」「ああしたらいい」と考えていたからでした。これでは効果的な改善案などできるはずがありません。

 コンサルタントは保育士さんたちの仕事をじっと見ながら「なぜあんなやり方をしているのか?」「どうして時間内に業務が終わらないのか?」と問いかけを行いました。たくさんの気づきがありましたが、特に気になったのは本来は子どもたちを見ていなければならないのに、しばしば事務室に入ってパソコン作業をしていることであり、それが子どもたちを送りだした後も続いていることでした。

 理由を聞くと、本社への報告書や保護者への連絡事項などをパソコンでたくさんつくらなければならないのに、パソコンが2台しかなく、しかたなしにみんなが交代で事務室で作業をしているというのです。それでも時間内に終わることはなく、結局は残業をしたり、自宅持ち帰っていろいろな作業をするしかないというのが保育士さんたちの悩みでした。

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桑原 晃弥

くわばら てるや

1956年広島県生まれ。経済・経営ジャーナリスト。慶應義塾大学卒。業界紙記者、不動産会社、採用コンサルタント会社を経て独立。人材採用で実績を積んだ後、トヨタ生産方式の実践と普及で有名なカルマン株式会社の顧問として、『「トヨタ流」自分を伸ばす仕事術』(成美文庫)、『なぜトヨタは人を育てるのがうまいのか』(PHP新書)などの制作を主導した。著書に『スティーブ・ジョブズ名語録』(PHP文庫)、『ウォーレン・バフェット成功の名語録』(PHPビジネス新書)、『伝説の7大投資家』(角川新書)、『トヨタのPDCA+F』(大和出版)など。バフェット関連書籍多数。


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