ヤクザは暴力を背景にするが、決して使いはしない。
向谷匡史氏インタビュー①
元週刊誌記者という異色の経歴を持つ僧侶がいる。新刊『親鸞がヤクザ事務所に乗り込んで「悪人正機」を説いたら』を著した、向谷匡史氏だ。仏教とヤクザを描く、独特の視点を持つ氏の頭の中をのぞいた。全5回の連続インタビュー第1回。
■週刊ポストの専属記者だった過去
――本書についてご解説いただく前に、ぜひ先生のユニークなキャリアから追いかけてみたいと思います。ずっとメディア畑で活躍されていたんですよね。
学生時代から少しずつ執筆の仕事はしていました。大学を卒業してから本格的にはじめて、最初は週刊ポストの専属記者として人物インタビューや対談なんかを担当していましたね。当時は、発行部数82万部なんて言っていた雑誌全盛の時代。事件、芸能、ニュースを追いかけるのはもちろん、インタビューや対談記事などもずいぶん書かせていただきました。
駆け出しの頃は、ちょうど“花の中3トリオ”の時代で、山口百恵、桜田淳子、森昌子の座談会を取材したことありました。取り巻きというか、マネージャーとかレコード会社の人間とか、とにかく“おつきの人”がたくさんいる中で私が司会進行をするという状況で、冷や汗をかいたのを覚えています。
インタビューをやっているうちにわかってきたのは、人というのはどんな著名人でも無名人でもそうですが、“人からどう見られているか”を気にするんですね。例えば歌手だったら、お会いした時に「この間出た新曲について、渋谷のレコード店でこんな話を聞いたんです」というところから入ると、必ずその先を聞きたがる。
映画女優もそう。「あのシーンは、皆さん、こう言っています」というと、「もっと聞かせてくれ」と言って食いついてくる。その当時の経験は後に、コミュニケーションや会話術をテーマとして啓発本の執筆に大いに役立ちました。
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