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『教員免許更新制見直し』は人材確保と教員の負担軽減を達成できるか

第80回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

■はたして教員の負担は軽くなるのか?

 新型コロナウイルス感染症(新型コロナ)の感染拡大で教室の3密(密閉・密集・密接)状態を解消すべきという強い声にも押されて、1学級あたりの人数を減らす学級編制標準の見直しに萩生田文科相は成功した。小学校だけとはいえ、約40年ぶりの「快挙」であることは間違いなく、それに対する評価は高い。
 その少人数学級への取り組みが今年4月からスタートしたわけだが、そこで問題になっているのが教員の確保である。1学級あたりの子どもの数を減らせば、単純に考えれば学級が増えることになる。
 学級が増えれば担任をはじめてとして、それに見合う教員の数が必要になる。小学校の全学年で1学級35人以下としなければならない2025年度までには、新たに約1万3千人の教員増が必要になるとも推計されている。

 しかし、現状でもすでに教員不足なのだ。全国の小中学校の教員数が定数に対して少なくとも500人が不足していると、昨年6月にNHKが独自調査によって明らかにしている。少人数学級がスタートした今年からは、さらに増えていくはずである。
 それにも関わらず、教員志望者は減っている。文科省によると、2020年度の教員採用試験の受験者は前年度より2,951人も少なかった。教員志望者の数そのものが減っているわけで、その傾向は続いている。これでは、少人数学級が実現しても、「担任のいない学級」が出現しかねない。そうなれば、文科相と文科省は非難の矢面に立たされることになる。
 文科相や文科省にしてみれば、少人数学級という40年ぶりの「快挙」の評価を確固たるものにするためにも、教員の確保は急がなければならないテーマなのだ。そのために、外部人材の活用などという案にも本気で取り組んでいたりする。

 教員免許更新制の見直しも、そうした教員確保の一環としてある。
 文科省によれば、更新を怠ったために失職し、再取得した教員が2020年度だけでも24人いたという。この24人は再取得して復職したものの、免許失効を機に教員を辞めてしまうケースもある。
 待遇面で劣る非正規雇用の臨時的任用教員では、「10年もやっていて正規雇用されないのなら辞めよう」となっても不思議ではない。

 教員免許更新制度を見直すことで、それが理由で辞める教員を減らすのが文科省の狙いなのではないだろうか。1人でも多く教員を確保したい文科省にしてみれば、あれもこれもの策のなかのひとつということになる。
 文科省が教員の負担を軽くすることを、どれだけ本気で考えているのかどうか、疑問でもある。そうなると気になるのが、教員免許更新制度の講習の代替え案として文科省が考えているという、「教育委員会の講習や大学や民間のプログラム利用」である。
 それらを受講する時間は、業務として認められるのだろうか。費用は、国や自治体が負担してくれるのだろうか。

 時間も費用も自己負担であれば、教員免許更新制度と変わらないことになる。見直しをする意味が、教員側にはない。
 廃案の発言に期待するのも無理ないかもしれないが、講習の内容がどう見直されるのか注意が必要である。

 

 

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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