厳しい時代の到来に備え、排他的極私的互恵的人間関係を作るべし【藤森かよこ】
家族にせよ疑似家族にせよ結社にせよ人間を支えるのは人間
■家庭や家族の問題を丸投げされることに対する女の警戒心
女たちが、家庭を持つことや家族を形成することに躊躇する気持ちはわかる。コロナ禍によって、未来への不安が増していることに加え、今の日本には家庭や家族に関連する問題が山積している。子ども虐待。家庭内暴力。母子家庭の貧困化。老人介護。少子化による未来に確実に起きる国内経済の収縮。引きこもりは100万人超えている。孤独死孤立死の増加。自殺者の増加。
かつては、家庭や家族に関連する問題への対処は女に丸投げされていた。今でも丸投げされる傾向が大きい。たとえば、口には出さずとも心の底でこう思っている男性は少なくないのではないか。
子ども虐待? 母親が離婚後に、子どもの父親ではない男と結婚したり同棲すると子ども虐待は起きやすい。母親ならば子どもの養育を第一に考え、男のことは諦めろ。生物学的な父親が実の子どもを虐待する場合は、母親ならば子どもの盾となり、父親が子どもに対して暴力をふるわないように工夫せよ。
家庭内暴力? DV男は一種の知的障碍者であり、物の道理を言ってもわからないのだから、諦めて我慢しろ。男を刺激しないようにうまく扱え。怒らせるな。そんな男と結婚したのだから自己責任だ。
母子家庭の貧困化? 母子家庭になって貧困に陥るのは離婚が主たる原因であり、かつ母親に定職がなく、頼れる親族もない場合だろう。ならば、母子の生活費を確保する見込みもないのに、なぜ離婚したのか。母子の生活費が確保できるようになるまで我慢して結婚を継続させよ。
老人介護? 昔は女が我慢して、義両親や親の介護をしたものだ。老人の孤独死とか、離婚後の中年男の孤立死なんて、女が我慢して面倒みてやれば、そんなことは起きないのだ。
少子化? 生きがいでもあるし、自分の収入は確保したいから仕事を育児のために諦めることはできない? 子どもをきちんと育て上げることこそ女が社会に最も貢献できる道だ。いくばくかのカネのために育児の手を抜くと後悔するはめになる。家計が苦しいから子どもはひとりしか産めない? 貧乏でも夫の給与内で生活せよ。昔の女はそうしながら、何人も子どもを産み育ててきた。
自殺者の増加? セイフティネットは、いつだって家庭だ。家族だ。特に母親だ。女だ。女が支えないと、いったい誰が支えるのか?
子どもの引きこもり? 3歳までに人間は決まってしまうと言われるではないか。もっと真剣に、しかし神経質にならずに、おおらかに、かつ細心に育児をせよ。スマホなど弄っていないで、もっと子どもにほんとうの関心を持て。3歳までに決まってしまうのだから。
男性の本音は「女さえ我慢すれば問題はないのに・・・」だ。つまり、それだけ男たちや社会は女に依存してきた。今でも、その依存度が激減しているわけではない。どこまで行っても、大多数の男にとっては、家庭や家族は女が責任を持つ領域である。自分もその領域の当事者であり、その領域の問題に対処する責任があるという自覚は、ほんとうにはない。だから、「家事を手伝う」とか「育児を手伝う」とか言ってしまう。家事も育児もしてあたりまえとは思っていない。
依存され責任者とされる女からすれば、冗談ではない。女を生身の人間ではなく、プラスチックだろうが産業廃棄物だろうが汚染水だろうが何を垂れ流してもいい海だと無自覚にも前提している男の幼稚な無責任さに苛立つ。フランス語では海は女性名詞(la mer)であるが、今や本物の海だって汚染が限界を超え浄化できそうもないことが問題になっているのに。