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厳しい時代の到来に備え、排他的極私的互恵的人間関係を作るべし【藤森かよこ】

家族にせよ疑似家族にせよ結社にせよ人間を支えるのは人間

 

厳しい時代になればなるほど人間には家族や家族的関係が必要

 

 コロナ禍を契機に一層に世界は不安定化しつつある。そのような厳しい近未来が待っているからこそ、私は、女性たちに敢えて排他的極私的互恵的人間関係である家族や家族的関係を保持することや形成することを勧める。

 女が排他的極私的互恵的人間関係を形成しようと結婚する場合、婚姻相手の男は、無意識に家庭や家族などは女が責任を持つ領域であると前提しているので、家庭や家族に問題が生じたら、その問題への対処が自分に丸投げされる可能性は高い。それはあらかじめ承知しておこう。

 「承知しておこう」と私が書くのは、唯々諾々と自己犠牲することを意味していない。どのみち、あなたの家庭や家族に問題があるのならば、あなたは当事者なのだから、その問題に対処するのはあたりまえのことなのだから、粛々と対処すればいいだけのことだ。対処に失敗しても、大局的にはどうということはない。一国が滅びるとかの類の問題ではないので、反省し謝り、またやり直せばいい。

 男性のみなさんへ。あなたが無意識に家庭や家族などは女が責任を持つ領域であると前提して、私的領域ではいつまでも子どもをやっていたい気持ちはわかるが、せめて、自分がそういう存在であると自覚して、私的領域での責任者を引き受けてくれる女性への感謝はちゃんと表現することを勧める。

 ゆめゆめ、そんなことは当然だなどという態度は採らないように。離婚すると、社会的にも孤立して孤独死しやすいのは男のほうだ。この事実は、(女が責任を引き受ける)排他的極私的互恵的人間関係の恩恵を男の方が受けているということを示唆している。

 女も男もLGBTQも弱い。弱い者が結束しないで、どうするのか。ましてや、何の後ろ盾もない庶民が結束しないで、どうするのか。結束のしかたを学ぶのも、家庭においてであり、家族との関係をとおしてである。

 公的機関ができることは、良くて、あなたを飢えさせずに生きながらえさせることだけである。あなたが、あたかも保護され管理される人畜であるかのように。あなたの心の飢えや渇きは、あなたにとって特別な人々や、あなたを特別な人と思ってくれる人々と共に生きることをとおして癒される。

 そんなことは、あまりにあたりまえなことで言うまでもないこと? そうだろうか。私は、最近の日本人の排他的極私的互恵的人間関係形成力が弱くなっているような気がしてしまうのだが。

 排他的極私的互恵的人間関係形成にはリスクが伴う。リスクを嫌う日本人の多くは、ならば独りでいるほうがマシだと思う。しかし、ここはあえて蛮勇をふるうべきだと私は思う。

 

文:藤森かよこ

 

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藤森 かよこ

ふじもり かよこ

1953年愛知県名古屋市生まれ。南山大学大学院文学研究科英米文学専攻博士課 程満期退学。福山市立大学名誉教授で元桃山学院大学教授。元祖リバータリアン(超個人主義的自由主義)である、アメリカの国民的作家であり思想家のアイン・ランド研究の第一人者。アイン・ランドの大ベストセラー『水源』、『利己主義という気概』を翻訳刊行した。物事や現象の本質、または人間性の本質を鋭く突き、「孤独な人間がそれでも生きていくこと」への愛にあふれた直言が人気を呼んでいる。  

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