まるでスパイ映画。1980年代「ロシア」のこわい話。
ほんとうのロシアとモスクワ①
こうしてデビッドさんは上司と一緒にモスクワ出張を完了し、無事に法人営業としての実績も挙げた。ロンドンに帰ったデビッドさんは、早速アフィノゲノフさんに電話したが、休暇を取ってロシアに帰っているところだと聞いた。ロンドンに戻り次第連絡して貰えるよう彼の同僚に伝え、アフィノゲノフさんとよく出くわしていたいつものパブでビールを飲みながら、同僚たちとこのロシア人の業界仲間の話しをしていたデビッドさんの元へ、ある日想像もしていなかった連絡がきた。
■MI6からの突然の尋問、そして…
MI6(英国国際秘密情報部。ロシアのKGB、アメリカのCIA、などに似た国家機密情報機関)から、事情聴取の為にMI6オフィスへ来るように、との連絡がきた。そこでの尋問は、アレクセイ・アフィノゲノフという人物が実在するか、実際に会ったことがあるか、どういう機会で知り合ったのかなど、アフィノゲノフさんに関する徹底的な情報提供を求められた。ロシア出張のビザで助けて貰っただけではなく、業界の法人営業仲間として、彼の数学的な能力には一目置いてデビッドさん。自分が知るアフィノゲノフさんの姿を正直に話し、MI6での尋問は終わった。
時は流れ、2018年。当時の話しを懐かしそうに語るデビッドさんは、「今思うと、アレクセイはKGBのスパイだったんだろうな」と正直に述べてくれた。ロンドンの金融街にある、老舗のパブ、イェ・オルデ・チェシャ―・チーズで、パイントグラスを片手にこの話しを語るデビッドさんは、最後に不敵な笑いを浮かべて、こう言った。
「アレクセイとよく出くわしていたパブというのは、実はここなんだよ。ここでヤツに一杯奢るまでは、お互いにまだまだやらないとな」
モスクワという街、そしてロシアという国がどういうところなのか、興味が沸いてきた。
次回、時は流れて「21世紀のモスクワ」へ。
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