振り込め詐欺「出し子」に堕ちた19歳を救え〈前編〉
新之助からの着信。いやな予感は的中し…
■極度の人間不信
「実は今新宿駅でさっきの友達が逃げてきていて一緒にいるんですよ」私は、新之助の性格はある程度わかっているのでここでピンときた。話を途中でさえぎり、「いや、友達じゃなくて全部新之助の話なんでしょ。正直に言わないと助けるも何もできないよ」と返した。
すると新之助は涙声になって「すいません、ほんとにすいません。俺、誰も信じられないんですよ」と言う。
最後の言葉に私も頭にきて「信じられないなら、なんで俺に電話してきたの? 俺は仕事の付き合いもやめてわざわざ抜けてきたんだよ」と怒気を含む口調で言った。
「俺、ほんとに神里さんのことを信じていいですか? もうだめです。今日も“仕事”(詐欺)をしてしまって」絞り出すように新之助は言った。
振り込め詐欺を含む組織的な犯罪は年々厳罰化している。これは今までのケースと違ってシャレにならない――。そう思った私は、「今、新宿にいるんだよね。タクシーですぐ向かう。少しだけ俺のことを信じてもらえないかな」とさっきとは違い優しい口調で言った。
「わかりました」その言葉を聞くや、私はすぐに大通りにでてタクシーに乗り込んだ。
「新宿駅までお願いします」私はそう告げて大きくため息をついた。
(後編に続く)
※氏名は仮名です。少年のプライバシーを尊重し、個人が特定されないように配慮しています。
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