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「風疹」にご注意。予防する方法はたったのひとつ!

別名「三日ばしか」。勝手に治ることもあるが…

■必要な「キャッチアップ」

 そこで、キャッチアップです。

 日本では、決められた年齢でないと定期接種としてワクチンが打てません。例えば、MRワクチンだと1歳のときと小学校入学前の2回しか無料のワクチン接種のチャンスがないのです。しかし、アレヤコレヤの事情でワクチン接種のチャンスを逃す人だっています。例えば、風邪で熱が出ていたとか、お母さんが仕事で忙しくて小児科に連れていけなかったとか。

 ぼくが以前診た風疹患者は10代の妊婦でした。暗澹たる気持ちで彼女の診療をしたのですが、やはり子どものときにMRワクチンを打つチャンスを逃していました。

 キャッチアップは定期予防接種のスケジュールの外であっても必要な人に無料でワクチンを提供する制度です。例えば、アメリカの疾病対策予防センターCDCはちゃんとキャッチアップに特化した情報提供をしています(https://www.cdc.gov/vaccines/schedules/hcp/imz/catchup.html)

 アメリカではいつだって予防接種を無料で受けられるのです。移民が多いアメリカではスケジュールを逃してしまう人も多いわけで。

 予防接種制度は、頭の回転の速い、けれども本当の意味では頭の悪い官僚たちが、ちょこざいな小知恵を使って面倒くさくスケジュリングをしています。でも、これこそが机上の空論です。世の中も人々も、霞が関の官僚が部屋の中で考えるようには振る舞ってはくれないのです。

 厚労省も麻疹・風疹対策をしたがっています。例えば厚労省は永井豪の『マジンガーZ』を使った麻疹のポスターを出したりして、悪しき官僚っぽさを脱却しようとしました。多くの人は「厚労省なかなかやるじゃないか」と褒めたのですがぼくはむしろがっかりしました。というのは、「ワクチン接種を検討してください」と書いてあるだけで「接種すべきです」とはしていなかったからです(http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/measles/dl/poster_z.pdf)

「検討」なんていかにもお役所的じゃないですか。

 アメリカのCDCは例えば麻疹の免疫がはっきりしない人には麻疹ワクチンが必要(need)だとかワクチン接種を受けるべき(should)と強く勧めています(https://www.cdc.gov/vaccines/vpd/mmr/public/index.html。そこには、断固として麻疹をなくすぞ、増やさないぞ、というプロの決意が感じられます。

 2013年にやはり風疹が流行したとき、ぼくは『もやしもん』で有名な漫画家の石川雅之さんと一緒に風疹ワクチン打ちましょう、の啓発活動をしました(http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1305/15/news152.html)でこのときも「やっぱ必要なのはキャッチアップだよね!」と意見していたのですが未だ進歩なし。

 同じ話を何度もさせんなよなー。

『インフルエンザ なぜ毎年流行するのか』より構成)

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岩田 健太郎

いわた けんたろう

1971年、島根県生まれ。神戸大学大学院医学研究科・微生物感染症学講座感染治療学分野教授。神戸大学都市安全研究センター教授。NYで炭疽菌テロ、北京でSARS流行時の臨床を経験。日本では亀田総合病院(千葉県)で、感染症内科部長、同総合診療・感染症科部長を歴任。著書に『予防接種は「効く」のか?』『1秒もムダに生きない』(ともに光文社新書)、『「患者様」が医療を壊す』(新潮選書)、『主体性は数えられるか』(筑摩選書)など多数。


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