なぜ人は “過労うつ” になるのか?【林直人】
「資本論」が解き明かした仕事をつまらなくする原因
■ 「自分はX国の工作員だ」と思えば、どんな仕事でも楽しくなる
他にもマルクス経済学の概念の中には、我々が良く生きる上で大切なものがいくつもあります。代表的なものに「類的存在」という考え方があります。非常に大雑把に説明すると、人間は社会の中で生きているのだから、自分自身は他者に対しても責任を負っているのだ、他者は自分自身の同胞なのだ、という考え方です。
あなたの仕事がつまらない理由は、あなたが頑張る必要のない仕事を頑張っているからだ、という見方をすることも出来ます。
そもそも、日々の生活に必要なコストなんてたかが知れています。にもかかわらず、資本主義社会はさらに発展を求めて、巧みな広告宣伝で消費者に不必要なものを買わせようとします。そうして人々は本来不必要なものを買い、そのために借金し、それを返すために本来であれば不必要な仕事をするのです。
では、あなたが頑張る必要がある仕事、あなたが資金を投じるべき仕事はどこにあるのでしょうか。それは、この世界のありとあらゆる不条理の解決です。
たとえば、私が今経営しているネット家庭教師の会社は、私一人が暮らす分には十分すぎるぐらいの利益を得ています。しかし、私は自分の事業をもっと大きくしたいと思っています。なぜなら自分の事業を通じて、優秀なうつ病患者を全員雇いたいと思っているからです。彼らはたまに憂鬱なことがある程度の理由で、この社会から排除されています。これほど理不尽なことはありません。私の仕事は、ただ自分の贅沢のためではなく、彼らの雇用を創造するためのものだと考えているからこそ、事業を拡大したいと考えています。
「自分は我が母国の工作員であり、この社会を工作するために任務にあたっている」。このような自負を持てば、自分が贅沢したいという欲求が満たされても、仕事が面白いものでありつづけるはずです。もちろん贅沢も適度には大事ですが、自分が本当に欲しいものはなにか、本当に熱中できるものはなにかをよく考えた上で、一見つまらなく思える仕事でも楽しく取り組めるようになりたいものだと思います。
文:林直人