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日本一城郭が密集する地域は?〈後篇〉

外川淳の「城の搦め手」第82回

■日本有数の城郭密集地域

 その優美な姿から、人々の崇拝を集め、ついに世界遺産にも登録された富士山。時は戦国乱世。その南東山麓では、武田氏と北条氏が血みどろの陣取り合戦を繰り広げた。

 そのため、駿河東部は、日本有数の城郭密集地域と化した。

葛山城本丸の現況
信玄は、駿河を支配下に治めると、6男の信貞を養子として送り込み、葛山城主の葛山氏の乗っ取りに成功。晴天の日には、葛山城から名峰富士が望まれる。

 富士山麓の城郭密集地域の一角に位置する深沢城は、武田方が籠城する北条方に降伏を勧告する「深沢城矢文」が射られたことで名高い。

 深沢城攻防戦では、北条方は結果として撤退を余儀なくされたように、駿河東部の陣取合戦は武田方優位のうちに推移。北条氏康の死後、武田・北条同盟が復活すると、駿河東部地域も武田領とすることで合意している。

 

深沢城遠望
画面右側が本丸。武田方は中央の川の左側から矢文を城内へ向けて射かけた。 行けばこのような戦国時代のワンシーンが体感できる。

  駿河東部の城郭群は、実戦のなかで洗練された築城技術によって強化されており、戦国城郭としての見所に恵まれる。

大畑城空堀 大畑城には、壮大な空堀や櫓台などが残される。文献資料は存在せず、武田方、北条方のいずれが築いたかは不明。史跡案内板もなく、まったく整備されていない。大畑城のように埋もれた存在であっても、戦国城郭としての見所の多い城を探査することは醍醐味かも?

 駿河東部の城郭群は、城と城との密集度も高く、1日で数多くの城を巡るという充実感も味わうことも可能。 お城ファンの中上級者でなくとも、戦国の城の魅力を存分に体感できる。

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外川 淳

とがわ じゅん

1963年、神奈川県生まれ。早稲田大学日本史学科卒。歴史雑誌の編集者を経て、現在、歴史アナリスト。



戦国時代から幕末維新まで、軍事史を得意分野とする。



著書『秀吉 戦国城盗り物語』『しぶとい戦国武将伝』『完全制覇 戦国合戦史』『早分かり戦国史』など。



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