いつでもゴッホの《ひまわり》に会える東京の美術館
世界に6点しか現存しない!観方と展示情報
2018年秋、ムンク、フェルメール、ルーベンスなど日本でも人気の巨匠の回顧展が開催中ですが、どこもかなり混雑しているよう。名画は観たいけどじっくり鑑賞したいという方にオススメの美術館を藤田令伊さんの著書『企画展がなくても楽しめるすごい美術館』よりご紹介します。
■世界に6点しか現存しない《ひまわり》
「名品のある美術館」という点で外せないのが、「東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館」です。
世界に6点しか現存しないゴッホの《ひまわり》があるのですから。
花瓶に15本のひまわりの花が生けられているところが描かれています。しかし、花々はすべて咲き誇っているわけではなく、半分くらいは萎れており、なかには花びらがほとんど散っているものもあります。
そのため、第一印象はひまわりという花の陽気さを覚えますが、絵をよく見るにつれて次第に別のものが湧き上がってくるように思います。松尾芭蕉の俳句に「おもろうてやがて悲しき鵜舟かな」という句がありますが、ちょっとそれに通ずるものを覚えます。
ゴッホはどうして全部が咲きそろっているところではなく、半ば萎えた様子で描いたのでしょうか。すべてきれいに咲いているほうが見栄えがよかったはずですが。
しかも、この一枚に限らず、ロンドン・ナショナル・ギャラリーやアムステルダムのゴッホ美術館に所蔵されているよく似た絵柄のものなど、他の《ひまわり》においてもゴッホは同様に描いています。ゴッホの描くひまわりにはゴッホの心模様が仮託されているといわれます。
《ひまわり》のほかには、セザンヌの《りんごとナプキン》、ゴーギャンの《アリスカン の並木路、アルル》が常設展示されています。
また、企画展ごとにその他のコレクションも一部展示されます。
《ひまわり》はみなさんすでにメディアや図録で見慣れていると思いますが、実物を前にするとまた違ったものがあります。ここならゆっくり見ることができますので、一度《ひまわり》と対話しに行かれてはどうでしょうか。
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