ブラック企業は「見做し労働」でトコトン搾り取る
社会という荒野を生きる①
■長時間労働規制は事実上ザル
「ブラック企業」という言葉がインターネット上で使われ始めてから、随分時間が経ちました。その間、非正規雇用者がますます増えてきました。そんな中で、この「ブラック企業」という言葉が指し示すべきものも、ずいぶん変わってきてしまっているんです。
だから「ブラック企業」という言葉で一括りにされると、問題の切り分けが難しくなってしまいがちです。実際、何が問題なのか見通しが利かなくなっていると思います。まずは、そのあたりから整理をさせていただき、根本的な処方箋を提案いたします。
最初に「ブラック企業」の存在が世間的に大きな話題になったのは2008年の「ワタミ」事件[2008年、ワタミフードサービスに就職した女性が、入社後わずか2カ月で自殺。残業時間は1カ月で140時間にも及んでおり、女性の自殺は過労による労働災害であると正式に認定された]がきっかけです。これは「正社員の終身雇用制を前提とした、サービス残業による長時間労働の強制」でした。これは全体的問題の一部に過ぎません。
例えば、これは2014年に「すき家」で話題になった、非正規労働者による「ワンオペ」と呼ばれる過酷な夜間の長時間労働とは、方向性が違うものです。まず前者の「正社員の終身雇用を前提とした、長時間のサービス残業」。例えば、「霞が関官僚」にとっては、普通のこと。
それどころかマスコミ各社でも普通に行なわれています。皆さんも御存じの通りです。でも、これはABCマートの件と同じで、労使協定を締結して、労働組合側が「ここまではいいよ」という風に合意すれば、法的に全く問題ないということになっているのです。
これは「サブロク協定」と呼ばれるもので、労働基準法第36条に規定があるのでそう呼ばれます。だから「正規労働者の終身雇用を前提とした長時間サービス残業」については、労使協定を作ればエグゼンプション(除外規定)を持ち込めるので、長時間労働規制は事実上ザルです。