ふだんは「やさしい神さま」が「恐ろしい神」へと変貌する時とは
『本当は怖い日本の神さま』12月10日(月)より全国書店、オンライン書店にて発売
私たちが日ごろ神社にお参りしている神さまには、いつも願い事を聞いて助けてくれるやさしくて温和なイメージがあります。つまり、多くの日本人は、無意識的に八百万の神々のすべてが幸福をもたらす「善い神さま」と思い込んでいます。
でも、それは神さまについて「本当はよく知らない」ことからくる錯覚です。
そもそも日本の神さまは、基本的な性格として「善と悪」の二面性をもつ「二重人格者」なのです。
日本神話の人気者の素盞嗚尊などはその典型で、ヤマタノオロチ退治のスーパーヒーローでありながら、その一方では「世の中の諸悪の根源」という恐ろしい顔を持ちます。また、縁結びの神として有名な大国主の命にしても、もう一つの顔は、「あの世に通じる暗黒界のボス」というものです。
この怖い側面を体現するのがいわゆる「荒ぶる神」で、人間に対してその神威を示すときに暴力的な形がとられ、これが「祟り」と呼ばれるものの正体です。
「やさしい神さま」「恩恵をもたらしてくれる神さま」を知っただけでは、神さまを本当に理解したことにはなりません。神さまのことをもっと深く知ろうと思うなら、「やさしい神」と「怖い神」の両面を正しく理解することが大切なのです。
「はじめに」より
目次
第1章 神話の神さまのもう一つの顔
伊邪那美命──「神々の母」のもう一つの顔は死者の国の女王
素盞嗚尊──「諸悪の元祖」とされる荒ぶる神の代表格
天照大神──「日本の総氏神」のパワー源は祟り神のエネルギー
大国主命──「あの世」の暗黒面にも通じる鬼神のボス
迦具土神──母の命を奪って誕生した「火の神」の恐怖
禍津日神──「浄化」の善神の本性は、穢れから生じた災厄そのもの
岩長姫命──醜さゆえの「山の神」の嫉妬が祟りをもたらす
第2章 日本史を騒がせた怨霊神
崇徳上皇──「日本の大魔王」になると誓った日本史上最凶の祟り神
菅原道真──「学問の神様」は、もとは災いをもたらす悪神だった
平将門──朝廷に反逆し東国の自立を図った英雄の怨念
早良親王──桓武天皇を恐怖に陥れ、平安京への遷都を促す
藤原広嗣──荒ぶる雷神と化して怨敵を祟り殺す
第3章 神さまになった妖怪たち
天探女──記紀神話の中で唯一呼び捨ての嘘つき魔女
物の怪──多くの物語に登場する妖怪だが、神聖な一面も
夜刀神──姿を見ただけで一家・一族が根絶やしに
船霊様──漁師たちの船の守り神は嫉妬深い女神
天狗──強力な神通力で天変地異や戦争を引き起こす
第4章 民話・伝説でおなじみの悪神
河童──病気を流行らせ、子どもを殺す魔性の持ち主
雷神──日本神話に最初に現れる醜く恐ろしい怪物
風神──死霊が「魔風」となって不幸を運ぶ
山姥──聖性と魔性をあわせ持つ山の悪神
厄病神──異界からの侵入者がもたらす病気と災難
第5章 可愛い動物の霊が祟る
犬神──主人の命じるままに他人に祟りなす
猫神──なぜ猫を殺すと取り憑かれるのか
狐神──「霊獣」としての狐が呪われた獣になった理由
狸神──ずる賢さはないが、残忍さでは群を抜く邪鬼
猿神──生贄を要求したり、激しく祟る「山の怪物」
牛神──農業を守る聖獣だが、妖怪化して「牛鬼」となる
蛇神──死霊と結びつき、他家にも害をなす悪の権化
※巻末に〈怖い神さま〉ゆかりの社寺・霊場ガイドも掲載