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30年前の受験票がつなぐ、冬の記憶と母の優しい手

【隔週木曜日更新】連載「母への詫び状」第三十二回

■新潟は南魚沼。雪は日常の風景だった

連載「母への詫び状」第三十二回〉

 

 本物の雪国に住む人間にとって、雪というのは季節を感じさせるものではない。

 ぼくは子供時代を新潟県の南魚沼郡という日本有数の豪雪地帯で過ごしたが、雪は11月から降り始め、3月になってもまだ降り、家のまわりの雪が消えるのはゴールデンウイークの頃だった。

 早い話、雪は11月から4月までの約半年間、身のまわりに存在する日常の景色だから、そこにたいした季節感はない。雪がある季節を「冬」と呼ぶのなら、1年のうち半分が冬だ。

 真冬は家の玄関を出たら、踏み固めた雪の階段を2、3メートル登ってから地上に出る、などと説明して通じるかどうか。

 ただし、これも数十年前のことであって、近年は雪不足でスキー場が困っているとか、旅館やホテルが次々に息絶えてしまったとか、バブルのスキーブームの頃に数千万円で売られていた越後湯沢のリゾートマンションが、今は数十万円で投げ売りされているなんて話まである。

 今年も暖冬のため、まだオープンしていないスキー場が多数あり、子供の頃を思い出すと信じられないほどの違いだ。12月に雪が積もってないなんて!

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夕暮 二郎

ゆうぐれ じろう

昭和37年生まれ。花火で有名な新潟県長岡市に育つ。フリーの編集者兼ライターとして活動し、両親の病気を受けて帰郷。6年間の介護生活を経験する。



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