【奈留島(なるしま)】人生初連発!いざGo To 五島列島!超絶きれいな海と自然満喫!《マンガ&随筆「異種」ワンテーマ格闘コラム》Vol.17
【連載マンガvsコラム】期待しないでいいですか?Vol.17
◼︎妹・吉田潮は【奈留島】をどうコラムに書いたのか⁉️
日本にはものすごい数の島がある。今期の朝ドラのヒロインも宮城県の亀島出身だ。ま、日本そのものも島だけど、案外我が国の島を知らないし、制覇していないことに気づいた。49年生きてきて、47都道府県は一応すべて訪れているのだが、島となると、八丈島・三宅島(東京都)、石垣島・竹富島(沖縄県)、犬島(岡山県)、屋久島(鹿児島県)くらい。え、これだけ? 島国に住んでおいて、もったいない!
ということで、初上陸したのが長崎県の五島列島。前回書いた真珠葬の養殖場があるのが、五島列島の真ん中にある奈留島だ。五島列島の玄関口である福江島は知っていたが(川口春奈のおかげで)、奈留島…NARUSHIMA…知らなんだ…。地図を見ると、ものすごく複雑な形で入り組んだ、言葉では形容しがたい島である。
福江島の福江港からフェリーで約30分、奈留島に到着、の予定だった。実は行きの飛行機が遅れに遅れて定期便に乗れず、急遽海上タクシーを頼んだ。海上タクシーなんて人生で初めて! 今回の裏テーマは「人生初」。そうそう、旅の前に気合を入れて人生初の金髪にしたし。「パツキンBBAの珍道中in奈留島」である。
とにかく海がキレイ。透明度の高い水を見ると、そのまま飛び込みたくなる衝動に駆られる。前世は魚かな。もちろん、シュノーケリングも持参。ええ、泳ぎましたよ。4月だったので、乳首がもげそうなほど水は冷たかったけれど、日差しが強くて暑かったのでちょうどよい。しかも水からあがった後も、肌がさらさら。どういうこと? 普通、海から上がると髪はバサバサ、肌もベタベタして、全身磯臭くなるのだが、まるでシャワーを浴びた後のようにさっぱりしっとりしている。
実は、最初に泳いだ場所が世界文化遺産の「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」に登録された江上集落の目の前の海だった。ほんの少しだけ高台の木々の中にひっそりと建つ江上天主堂は国の指定重要文化財でもあり、白地に水色のラブリーな外観だが、中に入ると質実剛健かつ厳かな空気も流れている。陽の光で浮かび上がる秘密の十字架も拝見。過酷な人生を強いられた潜伏キリシタンにちょっと思いを寄せた後で海に入ったせいかしら、と勝手に解釈することに。
それにしたって、奈留島はどこへいっても磯臭くない。4月だからか、海が美しいからか、神のご加護か。その答えは、長崎大学水産学部の松下吉樹教授があっけなく教えてくれた(電話で。しかもこっちは酔っているのに、寛容なご対応!)。
「奈留島は岩場が多いので、有機物が少ないんです。潮間帯が少ないから磯臭くならないんですよ。肌がベタベタしないのは……気のせいです(笑)」とのこと。
潮間帯っつうのは、潮の満ち引きで露出したり海水に浸かったりする場所のこと。端的に言えば「生乾きでニオイを発生するモノや場所が少ない」ってことだ。
ちなみにこの松下先生は真珠葬の実現に尽力した方で、多賀真珠の清水多賀夫さんとともに何年も研究と試作を繰り返した、いわば「真珠葬の父」。ご自身も10歳で亡くなった愛犬ランちゃんを真珠葬にして偲んでいるひとりだ。
話を戻そう。奈留島は実に素朴な島で、妙に色気づいた観光地はない。だからいい。島の北西部の先端にある「野首(ノコビ浦)の防風堤」には、2時間ドラマのロケ地にしたいくらいの絶景が待っている。風は強いが、思わず事件の経緯を説明したくなるほどの崖。いや、崖というかトンネル工事の土を高く積んだだけなのだが、急斜面を上りきったとき目の前に広がる紺碧の海ときたら!
島の南にある「舅ヶ島千畳敷」へは早朝、日の出を見に行った。結構な段差のある岩場には、その昔生息していたサイの足跡(要するに化石)があるそうで。いや、くぼみだらけでどれかわからなかったが、岩場に流れ着いていた謎の骨を発見。頸椎が長い。一瞬「なにコレ…竜?!」と思ったが、振り返ると岩場の突端にシラサギが佇んでいた。あ、シラサギの骨か。自然界の淘汰を感じた朝焼けのひととき。
で、今回最大のイベントとなったのが、奈留島の周囲をぐるりと巡るクルージングだ。宿泊先の「民宿かどもち」のご主人・葛島義信さんが船を出してくださった。下調べの段階で、姉が「隠れキリシタン洞窟が見たい!」と言っていたのだが、この洞窟は奈留島の隣の若松島にある。船をチャーターしないと行けない場所。そんな話をしていたら、葛島さんが快諾してくれたのだ。
奈留島と若松島の間をシューッと通って、隠れキリシタンが煮炊きをして見つかってしまったという洞窟の近場まで船を寄せてくれた。切り立った岩場の連続、想像を絶する荒々しさ。こんなところに身を寄せて暮らしたなんて。
事前に、隠れキリシタンについて予習するために、遠藤周作原作、マーティン・スコセッシ監督の映画「沈黙-サイレンスー」を観たのだが、肉眼で見る島の荒々しさはまた異なる次元。あ、映画は窪塚洋介と塚本晋也の鬼気迫る演技をぜひ観て。
さて、葛島さんは奈留島の北にある葛島の出身だ。名前はクズシマさんだが、島の名前はカズラシマ。昭和48年に住民が奈留島へ移住し、現在は無人島だという。その際に残した牛が野生化し、野良牛として生きていると言われている。
カズラシマに上陸し、葛島さんのガイドで学校跡や教会跡を回る。確かにまだ乾いていない牛の糞が落ちていた。姿は見なかったが、野良牛いるね、確実に。
当然カズラシマでも泳ぎ、魚やタコやクラゲに挨拶をした後、葛島さんの手ほどきで海釣りを初めて体験した。もうね、入れ食い状態でカサゴが釣れる、釣れる。
釣ったカサゴは、葛島さんの妻・志代美さんが翌朝お味噌汁にしてくれた。そういえば、無人島に上陸したのも、自分が海釣りした魚を食べたのも人生初だった。
葛島さんご夫婦に話を聞くと、世界遺産登録のおかげで観光客は増えたが、奈留島はあくまで立ち寄るのみ。ツアーで来てもほとんどが駆け足で、奈留島に宿泊はせず。だからこその素朴さと美しさが維持されているのかもしれないけれど。
島に信号はひとつだけ、魚は自分で釣るので魚屋がない。どの家も軒先で花を育てている。これがどの集落でも見られるので驚いた。中心部の奈留町浦はもちろん、矢神でも汐池でも永這でも、色とりどりの春の花をふんだんに植えている。穏やかな風景は奈留島住民の真面目でサービス精神旺盛な人柄を表しているかのようだ。
葛島さん兄弟で営む三兄弟工房にもお邪魔した。長男の義信さんとふたりの弟、そして義信さんの息子さんもいるので、正しくは「三兄弟+1工房」だそう。ツバキやヒノキを使った工芸品や土産物を製作、島内のバス停にある標識もこの三兄弟工房の手仕事だ。真珠葬のオフィスも、看板をはじめ、預かった遺骨を納めておくロッカーやネームプレートなど、すべて三兄弟工房が手掛けている。
五島の名物土産になったアジのストラップは、アジの開きに小さな出刃包丁がついていて、絶妙な抜け感が可愛い。話を聞いたら、出刃包丁は長男、アジ本体は次男、文字や模様を焼き付けるのは三男の分業制だとか。なるほど。三兄弟が力を合わせて作り上げたわけだ。ストーリーがある土産物はいい。確実に売れるよね。
ということで「こんなの初めて♡」を連発した4日間。どんだけ奈留島になついたんだよ。葛島さんからはLINEで「里帰り待ってます」と来た! そりゃ、なつくでしょ、里帰りするでしょ! 不穏で不安な日々が過ぎ去って、ちょっと旅したいなと思ったら、ぜひ五島列島の奈留島をお勧めしたい。私も早く里帰りしたいわ。
(連載コラム&漫画「期待しないでいいですか?」次回は来月中頃です)
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毎月14、15日頃連載コラムvsマンガ「期待しないでいいですか?」
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