僕が婚活市場で出会った “こじらせ美女” との夜の交情【石神賢介】
『57歳で婚活したらすごかった』著者・石神賢介のリアル婚活レポート第4回
コロナ禍で少子化が10年進んだと言われるなかで、結婚相手を求める男女は増えているようだ。実際に婚活アプリなどの利用者は男女ともに増加傾向にある。そこで、本気で結婚したいと願う57歳、バツイチ、フリーランスのライター石神賢介氏の最新刊『57歳で婚活したらすごかった』(新潮新書)が話題になっている。「BEST TIMESリアル婚活レポート」連載第3回までで、石神氏が青山の少人数婚活パーティに参加し、知り合った元女優のマイさんと華道の先生のユキコさん、そして電気機器メーカーの秘書室で働くエミさんとの激しくリアルな様子を克明に描き、魑魅魍魎の婚活市場の実態を赤裸々に公開した。2週間に1度くらいのペースで食事し合う仲になった元女優のマイさんとのその後を語る。果たしてマイさんとの縁はどうなったのか?
■ベッドで泣かれる
元女優のマイさんと華道の先生のユキコさんはその後も連絡をくれた。2週間に1度くらいのペースで食事もした。アルコールが入ると、彼女たちは微妙に淫らな雰囲気になるが、それ以上の進展はなかった。
察するところ、二人とも婚活で知り合ったほかの男性とも同時進行で会っている。しかし、それはこちらも同じなのでしかたがない。
「今日、お泊まりしちゃいまちゅかあ?」
代官山で3度目の食事の後、マイさんが言いだした。
「いいの?」
彼女の自宅は池尻大橋。田園都市線で渋谷から1つ目の駅の近くだ。部屋でオスメス2匹のトイプードルを飼っているらしく、それを理由にいつも早めに帰っていた。
「ケンちゃんたち、今日お留守番できるようにご飯とお水を置いてきたの」
ケンちゃんというのは10歳のオスのトイプードルだ。メスのほうは2歳で、ミミちゃんというらしい。
すぐに部屋を予約した。渋谷の国道246沿いの、かつて結婚相談所の仕切りでサキさんとお見合いをした高層ホテルだ。タクシーをひろえば、10分かからない。彼女は気まぐれだ。気持ちが変わらないうちにチェックインしたい。
「今日、マイちゃんとすることになるとは思いまちぇんでしたかあ?」
そう言って、部屋に入るなり首に腕をからめてくる。
元女優だけあって、顔は美しい。細身の体形もしっかり維持している。本もよく読んでいるし、映画や演劇や音楽など、カルチャーにも詳しい。聡明だ。なのに、赤ちゃん言葉がすべてを台無しにしている。
マイさんの後にバスルームを使い部屋に戻る。間接照明の薄明りの中で、白いバスローブをまとったマイさんが立っていた。
「じゃーん!」
大げさにバスローブを脱ぐ。小さな淡いピンクの下着をつけていた。
「かわいいでしょ?」
抱きついてくる。こちらの下半身はすでに準備ができている。そのままベッドに倒れ込んだ。こういう行為をしたからといって、そのまま結婚というわけではないだろう。自分に言い聞かせる。
十分に時間をかけて、おたがいを確かめ合う。いい感じだ。そして、ついに中に入ったとき、マイさんがかすかに鼻をすすっていることに気づいた。
あらためて顔を見ると、閉じた目が涙で濡れている。
なぜだ? 涙の理由を知るすべはない。聞ける雰囲気でもない。
気づかないふりをして、先に進もうとした。しかし、鼻をすする音はやまない。
「大丈夫?」
つい聞いてしまった。
「うん……」
マイさんはうなずくけれど、涙はとまらない。
自分のものが活力を失っていくのがわかる。必死にエロなことを考えて、取り戻そうとした。しかし、ダメだった。やがてナカオレした。
「今日はやめようか?」
そう言うしかなかった。
「うん。ごめんね……」
しばらく無言の時間を過ごした。
「マイちゃん、帰るね」
マイさんは起き上がり、服をつけて、部屋を出ていってしまった。僕は全裸のまま、ベッドから見送った。
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