日本のビジネスマンは「数字」に弱すぎる。外食産業で大儲けした男の指摘
あらゆるチャンスに数字をもちだして、これを活用せよ
■朝と夕方では値段が違う
先日、アメリカから「T・M・Q」の社長が来日した。「T・M・Q」は「トレード・マーク・オブ・クオリティ」という会社のことである。驚いたことに、来日した「T・M・Q」の社長は28歳だった。
この「T・M・Q」が現在開発しているのが、スーパーの食品売場の生鮮食品の値段をデジタル表示にしておいて、状況をにらんで本部でスイッチひとつでこの値段をかえていくシステムである。午後3時に牛肉をいっせいに2割引にする、というときには、午後3時になると、本部でスイッチを押せば、デジタル表示がいっせいに2割ダウンになるのである。
日本だったら、値段をかえるとなると、新しい値段を商品にはりつけたり、値段表を書きなおしたりでたいへんな騒ぎになる。
それがボタンひとつでいっせいにできるシステムである。このシステムを活用すると、ある商品が売れてきたら、その商品の値段を100パーセントあげることも可能である。時間によって、売れゆきの状態によって、商品の値段が自由に変動させられるのだ。
産地からの情報で、今日中に売り切ってしまいたい商品があれば、その価格を操作することもできる。
現在のスーパーでは、朝、値段をつけたら、1日中その値段で売っている。それではいかん、という発想を「T・M・Q」の社長はするのである。
わが日本マクドナルドは、昭和54年にコンピューターを使った新しいレジスターシステム「POS」ポイント・オブ・セールス・システムの開発を松下通信工業(株)に依頼し、つくりだした。
この「POS」では、全店の一日の売り上げ集計が瞬時にでるし、全店の各品目の売り上げが瞬時に本社へはいってきて、私の目の前に数字がでてくる。私は「T・M・Q」の社長にそういって「POS」を自慢した。
ところが、28歳の社長は、「藤田さんは機械の使い方で損をしてる」というのである。
「全店の売れゆきを本社で掌握するだけならば、一方通行だ。本部から店に対して指示をするにもPOSを活用すべきだ。そうすれば、往復でPOSを活用できる」
そういうのである。指摘されれば、たしかにそのとおりである。うちでは「POS」をワンウェイでしか使っていない。
コンピューターの使い方というのはおもしろいものだ、と思ったし、さっそく往復で活用する方向で取り組んでいることは、いうまでもない。
パソコンのソフトウエアを使える人間はまだまだ少ない。パソコンどころかひどい人になると、カメラにフィルムもいれられない、という人が現実にはたくさんいる。
これからの時代は、パソコンぐらいは扱えないと、生きていくことはむずかしい。社会の落ちこぼれ人間になりかねない。
だから、カメラのフィルムをいれることができない、カメラはシャッターを押すだけだ、というような社長たちは、これからは消え去るだけである。
課長だ、部長だ、といばっていても、これからの時代はパソコンも扱えないようでは、通用しない。