世田谷城の軍師殿
外川淳の「城の搦め手」第87回
■テレビに出演していた研究者は…
以前、深夜テレビをなんとはなしに眺めていると、しょぼい甲冑姿を着た芸人の姿が目にとまり、様子を見ていると、そのバラエティ番組のメインテーマが「世田谷城」であることが判明した。その解説者として、城郭研究者が登場するという場面となり、ほんの数秒で、誰が登場するか予測してみた。
東京の大きな博物館に勤務している人は、過去に同じ番組に短パン姿で出演した記憶もあり、第一候補。関西の国立大学の人も、ちょくちょく衛星放送に顔を出しており、第二候補……。
しかし、城郭研究の第一人者として登場したのは、中世城郭研究会の大先輩だった。大先輩はテレビに出るようなタイプではないと思っていたのだが、世田谷城については、もっともメジャーな縄張り図を作成している関係から、出演を依頼されたと想定される。
彼はバラエティ番組において、どのような役割をするか、なぜか緊張感を抱きながら、画面を見守った。すると、登場ほどなく、芸人から「参謀殿」と呼ばれたのを「軍師です」と言い直したあたりから、大先輩のペースで番組が進行したように思えた。
その後、世田谷城の現状について、城郭研究者としての見識を存分に披露。その一方では、大先輩は、芸人のわけのわからないボケを無視することにより、笑いが生まれ、バラエティ番組にちゃんと対応していたように感じた。
短パンではなく、城郭研究者らしく、藪の中に突っ込むことができる服装で出演していた。また、語り口も普段と変わることなく、そのブレない姿勢に、あらためて敬意を覚えた。
中世城郭研究会の末席を汚す会員として、こまめに活動していた10年ほど前には、月1ペースで大先輩の尊顔を拝していたが、最近は、幽霊会員となり、年に2回ほどのペースとなってしまったのは、残念なことだと思う。