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成田悠輔の「高齢者の集団自決発言」と河野太郎の「監視社会推進」の病根【適菜収】

【隔週連載】だから何度も言ったのに 第34回


「高齢者の集団自決」発言で炎上中の成田悠輔は、自分が老人になったときに何を言うのだろうか。河野太郎は監視社会への推進発言を公然と垂れ流している。この二人に共通するところは多い。 それは精神的な幼さだ。 日本をダメにした B層の研究』を刊行し、売国政治屋・マスコミをのさばらせた近代大衆社会の末路を鋭く分析した適菜収氏の「だから何度も言ったのに」連載第34回。


デジタル相・河野太郎は日経新聞のインタビューで「デジタルデータの国際流通を円滑にする初の国際組織を新設する」などと表明したばかり。

 

「唯一無二」の人々

 成田悠輔という奴が「高齢者は老害化する前に集団自決、集団切腹みたいなことをすればいい」と発言して反発を浴びているが、2年くらい前、新型コロナに関しても表現は抑えめだけど同じようなことを言っていたバカがいた。よって、これを成田個人の問題として捉えると間違える。新自由主義的なものに脳を汚染された大衆社会の問題として捉えるべき。

    *

 人はかならず死ぬ。統計的には高齢者が先に死ぬが、実存的には自分がいつ死ぬかは分からない。ここ最近、一気にいろいろな人が亡くなったような気がする。もちろん、毎年多くの人が死ぬわけだし、そのように感じるのは年齢的なものもあるのかもしれないが。

 今年になってからは、ちょっと思いつくだけでも高橋幸宏、鮎川誠、松本零士、門田博光、加賀乙彦、森田実、田勢康弘、目黒考二……つい先日には笑福亭笑瓶も亡くなった。「だめ連」のぺぺ長谷川(塚原活)も自宅で孤独死した。もう20年以上会っていないけど。たまに早稲田にある沖縄食堂とかで話をした

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 人が死ぬと美化されることが多い。安倍周辺にいた元NHK記者は安倍が死んでもヨイショ記事を書いているし、『安倍晋三・回顧録』という本も出た。森友学園への国有地売却を巡っては「私の足を掬うための財務省の策略の可能性がゼロではない」と指摘。財務省について「自分たちの意向に従わない政権を平気で倒しに来ます」だって。当時も清和会を中心に財務省陰謀論が散々唱えられた。生前ホラしか吹かなかった男だから、信憑性についてはきちんと検証しなければならない。それとタイトルがいまいち。『或阿呆の一生』にすればよかったのに。芥川龍之介に失礼か。

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 失われてはじめて大切さに気づくケースもある。先日、某所で酒を飲んでいて、最後に小籠包を食べようと思ったら、長年通ったその店が閉店していた。あまりのショックにしばらく声が出なかった。香港、台湾、シンガポール……小籠包の店はいろいろ行ったが、そこが一番好きだった。余談だが、小籠包は熱くなければ意味がない。冷めたらおいしくない。だから、あらかじめ小皿に醤油と黒酢を入れ、針生姜を浸しておく。生姜が足りないようだったら、蒸篭が運ばれてくる前にもらっておく。そして、蒸篭が運ばれてきたら、蓮華に生姜と小籠包を乗せ、口に入れて一気に食べる。「蓮華の上で小籠包を箸で割き、スープを出して、お召し上がりください」といった説明も散見されるが、スープで口の中をやけどするくらいで丁度いい。

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「唯一無二」という表現がある。亡くなった人に対して「唯一無二の存在だった」と使ったりもする。串カツというカテゴリーで言えば、私の場合、大阪の新世界の「てんぐ」がそれに当たるのかもしれない。大阪の串カツ屋にはいろいろ行ったがあまり美味しくなかった。そしてあるとき気づいた。たまに串カツを食べたくなるのではなく、たまに「てんぐ」の串カツを食べたくなるのだと。頭の中に、あのジャンクな味が染みついてしまったのだと思う。どて焼もおいしい。「てんぐ」の串カツは中がトロっとした感じで、たこ焼きやお好み焼きの文化に連なっているような気がする。

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  • 目次

はじめに−−「B層」とは何か?

✳︎

第一章 内田樹と『日本辺境論』

辺境と偏狭

プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神

B層グルメと某評論家

B層という言葉が出てきた経緯

なぜ日本はこんなことになってしまったのか

ルース・ベネディクトの『菊と刀』

安倍晋三の行動原理

学問のブレイクスルー

マイケル・ポランニーと暗黙知

百人一首を暗記する意味

「型」を知るということの贅沢

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第二章 自立を拒絶する人たち

白井聡の『永続敗戦論』

終戦記念日という欺瞞

冗談は櫻井よしこさん

「サヨク」と「保守」の自己欺瞞

「主権の欲求不満」の解消

 ✳︎

第三章 「正義」を笠に着る人たち

ウクライナ首都の名称変更は「正義」なのか?

「人間は見たいものしか見ない」

社会的リンチというB層の「正義」

人種問題における「正義」の暴走

「ルッキズム」批判は「正義」なのか?

言葉狩りは「正義」なのか?

若年層に選挙権を与えるのは「正義」なのか?

山本太郎と「正義感」について

 ✳︎

第四章 陰謀論に走る人たち 

「無知の知」と「無恥の恥」

不道徳としか言えない果物屋

「維新に殺される」

新型コロナは「バカ発見器」でもあった

ひっくり返って駄々をこねる老人たち

Yahoo!ニュースのコメント欄

知識はあるけど教養がないバカ

デマは言論の自由にあらず

社会の変化は元には戻らない

99%の人が知らない話

✳︎ 

第五章 無責任な人たち

安倍の次は維新に騙されるB層

メディアの劣化が止まらない

大阪都構想のデマと事実隠蔽

総選挙で湧いてきたB層

✳︎ 

第六章 恥知らずな人たち

飼い犬の遠吠え

安倍晋三の本質を映し出す一枚

ツッコミ待ち政治家だらけの国

日本の崩壊に気づいていないB層

日本最大の権力者は「改革バカ」

「ジューシー」発言は外部の拒絶

悪意なく嘘を重ねる人々

カルト化した自民党広報本部

百田尚樹の「歴史改ざんファンタジー」

日本人は悪に屈したネトウヨ用語を使い騒ぎ出した元首相

✳︎ 

おわりに−−人間は過去を忘れ野蛮は繰り返される

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適菜 収

てきな おさむ

1975年山梨県生まれ。作家。ニーチェの代表作『アンチクリスト』を現代語にした『キリスト教は邪教です!』、『ゲーテの警告 日本を滅ぼす「B層」の正体』、『ニーチェの警鐘 日本を蝕む「B層」の害毒』、『ミシマの警告 保守を偽装するB層の害毒』、『小林秀雄の警告 近代はなぜ暴走したのか?」(以上、講談社+α新書)、呉智英との共著『愚民文明の暴走』(講談社)、中野剛志との共著『思想の免疫力 賢者はいかにして危機を乗り越えたか』、『遅読術』、『安倍でもわかる政治思想入門』、『日本をダメにした新B層の研究』(KKベストセラーズ)、『ニッポンを蝕む全体主義』『安倍晋三の正体』(祥伝社新書)など著書50冊以上。「適菜収のメールマガジン」も好評。https://foomii.com/00171

 

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