【連載】適菜収 死ぬ前に後悔しない読書術
〈第16回〉社説を読めばバカになる
哲学者・適菜収が「人生を確実に変える読書術」の極意を語る!
「読書で知的武装」するなんて実にくだらない!
「情報を仕入れるための読書」から、いい加減、卒業しよう!
ゲーテ、ニーチェ、アレント、小林秀雄、三島由紀夫……
偉人たちはどんな「本の読み方」をしていたのだろうか?
正しい「思考法」「価値判断」を身に付ける読書術とは?
哲学者・適菜収が初めて語る「大人の読書」のススメ。
第16回
社説を読めばバカになる
新聞もやめたほうがいい。朝刊と夕刊に一五分をあてたら、一日三〇分がムダになります。月にしたら一五時間です。
一五時間あれば、古典の大著を二冊は読める。年間なら二四冊です。
新聞なんて読まなくても、誰でも知っているような情報は自然に耳に入ります。たとえば総理が代わったとか、どこかで大きな地震があったとか。
あらゆる賢者が語っているのは「新聞は読むな」ということです。
ショウペンハウエルもキルケゴールもニーチェもゲーテも「新聞は読むな」と言いました。
ニーチェは言います。
ヘッセはなぜ人は新聞を読むのかと問います。
テレビを捨てればテレビ欄は必要なくなります。今の時代、株価欄はいらない。新聞の社会面には、どこで交通事故が起きたとか、どこで殺人事件が起きたとか、どうでもいいことしか書いていない。誰かが言ってましたが、社会面は他人の不幸を楽しむだけのもの。人間が下種になる。
社説を読めば、確実にバカになります。
社説がくだらないのは、書いている人間の能力が低いからではありません。
逆です。
きわめて能力の高い職人のようなライターだから、ああいう反吐が出るような文章を毎日量産できるのです。
特に大手新聞の読者は、数百万人単位です。子供から老人までいる。その大多数から苦情も反論も来ないような、毒にも薬にもならないような文章を書く必要がある。
そんなものを読む暇があるなら、寝ていたほうがましです。
ヘッセも端的に言っています。
〈第17回「新聞をやめよう」につづく〉
著者略歴
適菜 収(てきな・おさむ)
1975年山梨県生まれ。作家。哲学者。ニーチェの代表作『アンチクリスト』を現代語にした『キリスト教は邪教です!』、『ゲーテの警告 日本を滅ぼす「B層」の正体』、『ニーチェの警鐘 日本を蝕む「B層」の害毒』、『ミシマの警告 保守を偽装するB層の害毒』(以上、講談社+α新書)、『日本をダメにしたB層の研究』(講談社+α文庫)、『日本を救うC層の研究』(講談社)、『なぜ世界は不幸になったのか』(角川春樹事務所)、呉智英との共著『愚民文明の暴走』(講談社)、中野剛志・中野信子との共著『脳・戦争・ナショナリズム 近代的人間観の超克』(文春新書)など著書多数。