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病気の多くはストレス過多による「脳疲労」が原因だった?

『医者通いせずに90歳まで元気で生きる人の7つの習慣』発売記念コラム5

特に健康に気をつかっているわけではないのに、元気で長生きしている人はどこか違うのか? それは日々の基本的な生活習慣にあった。多くの患者を見る町医者であり、ベストセラー本の著者である長尾和宏先生が、90代を元気で過ごす人から得た、超基本の生活習慣とは。

■運動して疲れるのは体より脳

 

 九州大学名誉教授の藤野武彦先生はストレス過多による「脳疲労」がさまざまな病気を起こしていると考え、脳疲労という概念を提唱しています。

 藤野先生は、「ストレス過多(情報過多)により大脳新皮質と大脳旧皮質の関係性が破綻し、正常な機能を果たせなくなった状態」を〝脳疲労〟と定義しています。もう少し簡単に言えば、ストレス過多、情報過多によって脳が疲れて、脳が本来の働きを果たせなくなっている状態のことです。

 ストレスがあると心が疲れます。忙しくなると体が疲れます。でも、実はいちばん疲れているのは脳なのです。

 たとえば、運動をすると疲れますよね。おそらく「体の疲れ」を感じると思います。たくさん歩いた後には足が疲れますし、猛暑のなかゴルフをすれば1ラウンドでくたくたです。

 ところが、疲労医学における第一人者である梶本修身先生らの研究では、4時間も体にに負荷のかかる運動を続けても筋肉にはほとんど影響はなかったそうです。一方で、大変なのが、運動時はもちろん、24 時間365日絶えず呼吸や心拍などを細かく調節している自律神経です。

 もちろん自律神経は勝手に働くわけではなく、その自律神経をコントロールしている中枢が脳にあります。そのため、体にかかる負荷が大きければ大きいほど、体以上に脳内の自律神経の中枢が疲れるのです。

 脳というのは、自律神経だけではなく、全身を支配していますよね。だからこそ、脳が疲れればいろいろな不具合が起こります。

 藤野先生は、脳疲労から心と体に異常、病気が起こる理由を次のように説明しています。

 ストレス過多によって脳疲労が起こると、五感の機能が低下し、満腹中枢がおかしくなって食べすぎたり、体を動かしたくなくなったりという行動異常が起こる。その結果、生活習慣病などの体の病気を引き起こす。
 一方、心のほうは、ストレス過多による脳疲労で情報に対する認識力、理解力、情報処理能力が低下すると、仕事や人間関係がスムーズにいかなくなり、それがどんどん悪化するとうつ病などのメンタル疾患を発症してしまう。

 つまり、体の病気も心の病気も、おおもとにはストレスと脳疲労があるということです。

 いまの医療は臓器別の縦割りになっているため、心臓が悪ければ心臓ばかり、肝臓が悪ければ肝臓ばかり、胃が悪ければ胃ばかりを診ます。パーツごとの医療です。でも、それらを支配しているおおもとは脳。その大事な脳をストレスから解放させてあげることが何より肝心です。

 生きている限り、脳にストレスがまったくない状態というのは、ありえません。そのストレスを脳がどう処理するかが問題で、処理しきれないほどにストレスが増えてしまうと本来の働きができなくなって何らかの病気になってしまうのです。

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長尾 和宏

ながお かずひろ

1958年、香川県生まれ。医師、医学博士。医療法人社団裕和会理事長、長尾クリニック院長。84年、東京医科大学卒業、大阪大学第二内科入局。95年、兵庫県尼崎市で開業、2006年より在宅療養支援診療所となり、外来診療と24時間体制での在宅診療を続ける。日本尊厳死協会副理事長、日本慢性期医療協会理事、日本ホスピス在宅ケア研究会理事、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本禁煙学会専門医、日本在宅医学会専門医、日本内科学会認定医、関西国際大学客員教授、東京医科大学客員教授。近著に『病気の9割は歩くだけで治る! 』『認知症は歩くだけで良くなる』(ともに山と渓谷社)、『がんは人生を二度生きられる』『その医者のかかり方は損です』(ともに青春出版社)、『「平穏死」10の条件』(ブックマン社)など多数。


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