あの「ネバネバ感」が地球環境を救う!
納豆が砂漠を緑化し汚水を真水に変える?
納豆のネバネバを利用した画期的な水質浄化剤!
納豆のもつ恐るべき力!!
日本を代表する食品「納豆」は、特有のネバネバ感、味やにおいから、外国人に嫌われる食べ物のひとつです。この納豆のネバネバは、ポリグルタミン酸と呼ばれる成分。
じつはこの成分には、汚れをキレイにする効果があります。「臭いものでキレイにする」とは、何だかウソのような話ですが、現に海外では、水質浄化剤として大活躍しています。
日本国内ではほとんど飲み水に困ることはありませんが、世界はそうでもありません。
河川・池沼の水や地下水を浄化せず、不衛生なまま飲み水としているため、食中毒や感染症になったり、乳幼児では死亡するケースも少なくないようです。
そうした世界の貧困や不衛生を改善したいと立ち上がったのが、大阪に本社を置くベンチャー企業「日本ポリグル」です。この企業は、画期的な水質浄化剤「PGa21Ca」を独自に開発しました。
PGa21Ca は、納豆菌が発酵する過程でつくられるポリグルタミン酸に、カルシウム化合物を混ぜた粉末状の水質浄化剤。これを泥水に入れてかき混ぜるだけで、ネバネバ成分が汚れをからめ取って沈殿し、やがて透明になり、安全かつきれいな水になる、という魔法のような薬剤。
しかも、わずか1グラムで10リットルもの水を浄化できます。
日本ポリグルの小田兼利会長が、PGa21Ca の開発に乗り出した発想の原点は、1995年の阪神淡路大震災。神戸の自宅で被災し、飲料水配布の行列に並びながら公園の池を見て「あの水が飲めたら」と考えたことがきっかけだったといいます。
その後、6年試行錯誤を繰り返してPGa21Ca を完成させましたが、水資源の豊かな日本では見向きもされませんでした。そこで、2007年に最貧国バングラデシュへもち込み、好評を得たことをきっかけにして、次々と途上国への販売に乗り出します。現在では世界40カ国に輸出し成果を上げています。
ちなみに、日本ポリグルは輸出以外に、PGa21Ca を利用した給水設備をインド、タンザニア、ソマリアなどに設置。さらにそれを、現地住民が運営できるシステムを構築し、雇用を創出するところまで手がけています。こうしたビジネスは、BOPビジネス(貧困地域向けビジネス)の先進的な成功例として、国内外から大きな注目を集めています。
また、納豆のネバネバ成分は、ほかにも意外なところで活躍しています。なんと、砂漠の緑化にも貢献しているのです。
納豆のネバネバ成分が、ポリグルタミン酸というアミノ酸の一種であることは前述しましたが、このネバネバ成分を水に溶かして放射線(ガンマ線)を当てると、寒天のようなゲル状になります。それを凍結乾燥させると、白い粉末状の「納豆樹脂」ができます。
納豆樹脂は吸水力が非常に高く、樹脂1グラムで5リットル、樹脂そのものの重さの5000倍の水を吸水できるという特性をもっています。この特性を利用して、たとえば、ヘドロに納豆樹脂を混ぜた土壌に植物の種をまけば、砂漠などの乾燥地帯や荒れ地でも植物を発芽させることができるのです。
さらにこの納豆樹脂は、加工も容易で、なおかつアミノ酸は有機物であるため、最後は土に還すことができるのも魅力です。九州大学の原敏夫准教授は、こうした納豆樹脂の特徴に目をつけ、納豆樹脂を活用して「砂漠を緑化して地球温暖化を防ぐ!」という壮大なプロジェクトを立ち上げました。
プロジェクトの具体的な内容は、まず納豆樹脂を使って紙オムツをつくり、オムツとして使用することで水分を吸収させます。そして、この使用済み紙オムツを砂漠に埋めて水分を確保し、砂漠を緑豊かな大地に変えるというもの。
最終的には、土中に埋めた紙オムツも微生物に分解されて土に還ってなくなるため、ゴミ問題に悩まされることもないというわけです。
このプロジェクトは、原准教授みずからが旗振り役となって立ち上げた、ベンチャー企業「ハラテックインターナショナル」によって今も進められています。実際のところ、プロジェクトが壮大なだけに、まだまだコスト面や技術面など課題は多いようですが、原准教授は、すでにポリグルタミン酸の大量生産(1日1トン)を実現しています。
食品としては、外国人になかなか受け入れてもらえない日本の伝統食・納豆ですが、じつのところは、世界中の人々の生活を向上させたり、地球環境を救うといった意味で、すでに納豆は「国際化」している食品なのです。