「安倍政権は民進党よりマシなのか?」
自称保守やネトウヨの「短絡思考」の罪悪。
作家・哲学者の適菜収が「安倍政権の無能と欺瞞」を討つ批判の毒矢
安倍政権は民進党よりマシなのか?
忘恩と思い上がり
「饑饉が原因の暴動では、一般大衆はパンを求めるのが普通だが、なんとそのためにパン屋を破壊するというのが彼らの普通のやり方なのである。この例は、今日の大衆が、彼らをはぐくんでくれる文明に対してとる、いっそう広範で複雑な態度の象徴的な例といえよう」(オルテガ・イ・ガセット『大衆の反逆』)
私は今の時代を表すキーワードとして「忘恩」「思い上がり」を挙げることができると思う。変革、改革、刷新と騒ぎ続けて四半世紀。変革を求める心情は、多くの場合、過去に対する無知と忘恩に起因する。
オルテガ(一八八三~一九五五年)は、人類が築き上げた組織の受益者たる大衆が「それを組織とは考えず自然物とみなしている」と指摘し、「彼らの最大の関心事は自分の安楽な生活でありながら、その実、その安楽な生活の根拠には連帯責任を感じていないのである」と喝破した。
彼らは、文明の中に「奇跡的な発明と構築」を見てとらない。恩義を感じるどころか、破壊の中にしか生の根拠を見いだすことができないのである。
二〇一四年一月二二日、世界経済フォーラム(ダボス会議)で、安倍は「(自分は)既得権益の岩盤を打ち破る、ドリルの刃になる」「そのとき社会はあたかもリセット・ボタンを押したようになって、日本の景色は一変するでしょう」と発言した。どうやらその日が近づいてきたようである。
民主党が政権の座をつかんだ日、私は自分のウェブサイトにこう書いた。
「本日、二〇〇九年九月一〇日、民主党が大勝しました。民主党に投票した人間は『自民党に対するお灸』のつもりでしょうが、この先間違いなく『国民に対するお灸』になるはずです」