眼球を右に動かす部分は足し算を、左は引き算を担当している?
専門医•日比野佐和子と林田康隆氏が語る目の新常識<11>
◇情報の8割は目から
人に備わる五感のなかで、もっとも多くの情報を集めるのが視覚です。まだ証明されてはいませんが、その割合は8割とも9割とも言われ、視覚が生きていくうえでとても大切な知覚機能であることは間違いありません。
しかし、見ているのは目だけではありません。脳との共同作業なのです。「見る」とは、目によって集められ、映し出された光の像を、脳が蓄積データと照合しながら映像化することです。つまり目と脳は、連携しなければ見ることができません。だから、どちらの機能も低下させることなく、むしろ向上させていきたいと思いませんか。
まず、目が顔の正面についているにもかかわらず、「脳内視力」担当となる一次視覚皮質のある場所は、頭の一番後ろ側にあります。この長い道のりを一瞬で駆け抜けながら、右目と左目の情報を合体させ、さらに多分野との接続や変換を行っています。脳はすごいということと、視覚情報はいろいろな機能につながっているということがおわかりいただけたでしょうか。
◇眼球を右に動かす部分は足し算、左は引き算
ついでにもう一つ、おもしろいことに、脳内で眼球を右に動かす部分は足し算(計算の)を、左に動かす部分は引き算を兼務しているという有名な脳科学者の研究もあります。私が眼トレは脳トレになると確信しているのは、こうした理由からでもあります。
さらに「見ている」ものと「見る」ものが区別されていることに気づいていますか? 逆に「見ていない」のに「見た」ことになっている場合もあります。前者は背景と対象物を区別して、必要な情報だけを選び取っている分離機能。後者はたとえば「眼トレは脳に効ききます」や「ビルバリーはアントシアニンを含むことが知らています」といった間違った文章も、さっと読んで理解してしまうことです。経験に基づいた脳の判別能力がなせるワザなのです(黄色部分に間違いあり)。
ちょっと前に爆発的に流行り、今でもたくさんの人が実践している「脳トレ」も、目から得た情報を脳がどれだけスピーディかつ正確に判断して、行動(回答)できるかを訓練する、目と脳の連携トレーニングだということです。
◇「視力回復 動物カード」で視力アップ
一方「眼トレ」は、目の筋肉をほぐして血行をよくすることでピント調節力をアッ
プさせる、いわば「目のストレッチ」。
目の焦点を近くから遠くへ、遠くから近くへと変えて、目の調節力を鍛えます。
私たちが提案する「視力回復 動物カード」は、目と脳の連携を意識したものでもあります。また、「眼トレはした方がよいとわかったけれど、なかなか続かない」という患者さんたちの悩みから、少しでも楽しみながらできるものをと、新たに「視力回復 動物カード」(『1日1分、眼トレ』/KKベストセラーズ)考えたのです。
脳科学でも、見る、捉える、見分けるという脳刺激をバランスよく使うことの大切さが説かれています。目を動かしながら、感覚、記憶、感情などの脳のさまざまな分野を刺激して、「見る力」を養いましょう。
『1日1分、2週間眼トレ 〜日比野&林田式〜』 (KKベストセラーズ)